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ローカルジャーナリズムの死と「民主主義の衰退」 ある地方紙の運命に見たメディアの未来図

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ローカルジャーナリズムの死と「民主主義の衰退」 ある地方紙の運命に見たメディアの未来図

もちろん、テクノロジーに「修正」はつきものである。グーグルは偽の記事を検索結果に表示させないよう、検索アルゴリズムを調整したと発表した。クレイグズリストのクレイグ・ニューマークは「WikiTribune」をローンチし、「証拠に基づくジャーナリズムのためのプラットフォーム」として売り込んだ。

フェイスブックも、出版社との密接な協業に向けた「フェイスブック・ジャーナリズム・プロジェクト」を立ち上げた。フェイスブックの最高経営責任者 (CEO) であるマーク・ザッカーバーグは、「報道の世界を支援するために、やらなければならないことがもっとある。そこには成長するローカルニュースも含まれている」と、長文のマニフェストで主張した。“フランケンシュタイン博士”にも、ようやく自分がやってきたことの意味が分かり始めたようだ。

こうした動きは、『ニューヨーク・タイムズ』や『ワシントン・ポスト』(アマゾンのCEOで世界一の富豪であるジェフ・ベゾスが13年に買収した)のような大手にメリットがあるかもしれない。加入者に課金できる有料のデジタルコンテンツで生き残りながら、大手テック企業と提携できるだけの影響力とリソースをもつ報道機関である。

ただ、ザッカーバーグたちが、イーストベイ・タイムズなどの地方メディアをどのように「成長させる」のかは不明だ。なにしろ、将来が保証されたように見えていたニューヨークとシカゴの情報サイト「DNAinfo」や、ニューヨークに特化した「Gothamist」などのデジタルブランドが、生き残れなかったのだから。

17年の初頭、これらのメディアの記者たちが労働組合の発足について投票を実施すると、オーナー企業はサーヴィスを終了してしまった。活動の継続に必要な「膨大な労力と費用」が理由である。

アルファベットのCEOエリック・シュミットはかつて、ニューヨーク・タイムズのミゲル・ヘルフトに対し、グーグルには売り上げ減少に悩む出版社に補償する「道徳的な責務」があると語っている。09年の話だ。いまのところ、このような補償は一切行われていない(ただしグーグルは、14年に地方紙の業界団体と協力して広告取引所を設立している)。

ロビー活動での薄い存在感

最近になってようやく、ジャーナリストもグーグルやフェイスブックの責任を強く問い始めた。『Vanity Fair』と『ニューヨーカー』の元エディターであるティナ・ブラウンは、先ごろ行われた『タイム』とのインタヴューで、次のように語っている。「フェイスブックとグーグルは、ジャーナリズムを支えるために巨額の基金を立ち上げるときだと思います。両社はこれまで、あまりにも多くの利益を奪ってきたのですから」

2,000社近くの地方メディアからなるニュース・メディア・アライアンスは17年7月、グーグルやフェイスブックと交渉する許可を連邦議会に求めた。議会の承認なく実施すると独禁法に違反するからだ。同団体の会長兼CEO、デイヴィッド・シャヴァーンは、テック企業とメディアの双方が「収益の共有」「データの共有」「定期購読の支援」「ブランドの支援」で合意することを期待している。

アルファベットは17年に1,360万ドル(約15億円)をロビー活動に投じてきたが、シャヴァーンの目的を達成するためには1セントも使われていないようだ。「(嘆願書に対して)グーグルやフェイスブックのロビイストが協力してくれたら驚きだね。まだ依頼はしていないけれど」と、シャヴァーンは言う。

嘆願書が提出されたあとの四半期、グーグルに協力しているロビー団体20以上、フェイスブックに協力している7団体に問い合わせたが、成果はほとんど得られなかった。嘆願書について耳にしたことがあるというグーグルのあるロビイストは、「こうした動きについては、まったく意識していませんでした。決して彼らが消極的というわけではないのですが」と語る。

ローカルニュースを救うかもしれない「何か」の萌芽

17年6月のある日のこと。アリゾナ州フェニックスで、地方ニュースの未来の一端を目にすることができた。マリオット系列の巨大なリゾート施設で、「Institute for Nonprofit News(非営利報道協会)」の年次総会が開かれ、非営利の新興メディアの編集者や発行人たちが全米から集まったのだ。業界関係者の多くは、非営利こそが地方ニュースの未来だと考えている。

総会の驚くほど明るい雰囲気からは、それが新しい何かの幕開けであるかのように感じられた。ある参加者は、これを「1947年にテレビに出演しているようなものだね」と形容した。当然のことながら、多額の出演料を除いての話である。

イーストベイ・タイムズをはじめとする紙の地方紙の将来は、決して明るくはない。だが、ここにある「何か」が救うことができるかもしれない。

その萌芽が、フェイスブック・ジャーナリズム・プロジェクトのジョシュ・マブリーとドリーン・メンドーサによる総会でのプレゼンテーションにあった。一言でいえば、ニュースの発信チャネルとしてフェイスブックを利用する「インスタント記事」機能の売り込みである。

質疑応答でフェイスブックの2人に対し、ミゲル・ハルフトのようにこんな質問をしてみた。「フェイスブックが新しいデジタル広告のほぼすべての売り上げを獲得する2社のうちの1社だとした場合、その収益の一部をコンテンツ制作者に還元するような考えが社内にはありますか?」と。数人から拍手が起こった。

フェイスブックのマブリーはやや驚いた様子だった。だが、彼はFacebook上のヴィデオからコンテンツ提供者が広告費を徴収できるようにしていることの素晴らしさを語り始めた。そして、Facebookではブランデッド・コンテンツやスポンサード・コンテンツ(基本的には広告が記事であるかのようにデザインされている)からも売り上げを得られる可能性について言及した。

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