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地球には戻ってこられない、それでも行きたい…日本人候補者が語る火星移住計画の魅力

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地球には戻ってこられない、それでも行きたい…日本人候補者が語る火星移住計画の魅力

収益源は「リアリティショー」?!

この計画には、ほかの民間の宇宙事業者が考えている、外惑星のレアメタル発掘やロケット輸送などの話は出てこない。前述のとおり、ロケット製造の計画などもなく、それらは契約でまかなう予定だ。ランスドルプ氏は、これを一種のリアリティショーとしてメディアで展開することを前提に、投資を募っている。

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「オリンピックは1回の開催で40億ドルの収益があります。ビジネスの観点からいえば、われわれの展開がもつ潜在的な価値はオリンピックの5~10倍と期待しています。放送権の売買などが大きな収益をもたらすでしょう。さらに知的所有権の収益もある。魅力的な投資対象となるはずです。われわれが初期費用として見込んでいるコストは約60億ドルですが、それを補って余りあるといえるでしょう」

ランスドルプ氏は、訓練過程や試験の様子も公開する。最初の火星移住者が選ばれる過程を、一大エンターテインメントにしてしまうのだ。有人火星着陸の場面は、その一連のショーにおける「最もインパクトの大きなストーリー」(ランスドルプ氏)というわけだ。

片道切符に申し込んだ日本人女性

この審査に現時点で残っている日本人女性がいる。東京藝術大学で油画の修士号、東北大学大学院で博士号を得た、小野綾子という人物だ。彼女が行う研究のひとつは、宇宙空間の長期滞在のストレスを芸術がいかに緩和できるか、というもの。この稀有な研究は、子どものころに抱いた「宇宙飛行士になりたい」という思いから始まっている。

「居間のソファから空を見上げて、『空をどこまでも行ったらどうなってるの?』と親や親戚に訊いたところ、『宇宙があって、果てしなく続く』と言われました。宇宙の果てに行きたいと思ったのは、そのときです。しかし結局、親の勧めもあって、美大に進学し、アートで宇宙飛行士の人たちに役に立てることはないかと考えました」

小野氏は、宇宙をテーマにモダン・アートやコンセプチュアル・アートの分野で作品制作を続け、芸術を応用可能な神経科学に関心をもち、東北大学大学院医学研究科に進学後、博士号を取得する。そして宇宙飛行士を志願するようになるが、宇宙機関での募集は5~10年に一度。大学院を卒業して数カ月たったころ、彼女はランスドルプ氏の講演を聴く機会を得る。

「この人は本気で火星移住を考えているのだ、と実感しました。また、45歳以上になると、宇宙空間での放射線耐性が出てくるという見解もあり、火星へ行く場合には、ある程度の年齢を重ねた方が選ばれる可能性もあります」

小野氏は、アメリカ・ユタ州にある火星を想定した訓練施設「マーズ・デザート・リサーチ・ステーション(MDRS)」で行われている実験にも参加した。これは火星に建造されることを想定した居住スペースで生活しながら、参加者の心理状態や地質学調査、通信、食事などに関するデータを詳細に集めるというものだ。小野氏は、クルーのストレス対策として、音楽、自然音を使った実験を行った。

MDRSでの二度にわたる2週間の滞在訓練が、火星へ行くことへの強い関心へ繋がったと小野氏は語る。

居住空間などを含む「Cargo」と呼ばれるモジュールが火星に並ぶ。©BRYAN VERSTEEG/MARS ONE

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