ミニチュアとは思えない! 懐かしの映画の場面をモデルカーで再現、その驚きの作品づくりの舞台裏

 

 ゴースト退治に出動したクルマも、タイムマシンになるデロリアンも、まさに映画『ゴーストバスターズ』や『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の世界そのもの。しかし実は、どれもミニチュアを使って再現し、ひとりの写真家が撮影したものだ。彼はいったいどんなテクニックを使って、映画の名場面を完璧に再現したのか。

仕事用の撮影がないときは、自分のコレクションを使った個人的なプロジェクトに取り組んでいる。映画『ゴーストバスターズ』に登場するこのゴースト退治専用車「エクトワン(Ecto-1)」もそのひとつだ。PHOTOGRAPH BY FELIX HERNANDEZ
スタジオに数日間連続でこもり、徹夜で作業することも少なくない。PHOTOGRAPH BY FELIX HERNANDEZ

フェリックス・ヘルナンデスは子どものころ、何時間も1人で自室にこもり、おもちゃを使ってさまざまなシーンをつくって遊んでいた。そしていまはメキシコのカンクンで暮らし、同じようなことをしながら写真家として生計を立てている。自動車メーカーのアウディや、ケーブルテレビチャンネルのニコロデオン(Nickelodeon)、玩具メーカーのマテルといった企業のために、自分のスタジオで手の込んだミニチュアのセットを組み立てて写真を撮っているのだ。

フェリックス・ヘルナンデスがミニチュアカーを使って生み出す写真の世界は、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』など大好きな映画のシーンを再現したものだ。PHOTOGRAPH BY FELIX HERNANDEZ
ヘルナンデスは、自身のスタジオで撮影用セットをつくる。何時間もかけ、細心の注意を払って仕上げている。PHOTOGRAPH BY FELIX HERNANDEZ

「わたしはオタクみたいなものです」と、ヘルナンデスは自認する。「幼いころから、部屋でおもちゃで遊んで物語を想像しているほうが、友達と外で遊び回るより好きでした。それはいまも変わっていないようです」

仕事用の撮影がないときは、個人的に楽しむためのプロジェクトに取り組んでいる。それらの多くは、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』や『ゴーストバスターズ』、『スター・ウォーズ』などの映画にヒントを得たものだ。

ヘルナンデスはすべての撮影セットをゼロから手づくりする。撮影セット用の大きなテーブルが置かれた薄暗いスタジオには、セットづくりに必要になりそうなありとあらゆるモデルやパーツが揃っている。

「スタジオに行くと、1日や2日は徹夜で没頭してしまうんです」とヘルナンデスは言う。「世界で一番好きな場所です」

当然のことだが、ヘルナンデスの6歳になる息子にとっても、このスタジオはお気に入りの場所だ。

■画像修正なしのカメラワーク

自動車を使ったシーンを撮るときはまず、標準仕様のモデルカーを組み立てる。そして、手を加え、色を塗り、自分の思い描いた通りの状態に仕上げていく。使い古されたクルマに見せるために風化の加工を施すこともあるという。

モデルカーの一つひとつに手を加え、使い込まれた雰囲気や傷、風合いを再現する。PHOTOGRAPH BY FELIX HERNANDEZ
モデルカーの一つひとつに手を加え、使い込まれた雰囲気や傷、風合いを再現する。PHOTOGRAPH BY FELIX HERNANDEZ

それから背景をつくり、照明を調整し、さまざまなアングルからシーンを撮影する。あとでPhotoshopを使って修正や追加補正をするのではなく、できる限り実際の写真からイメージをつくり上げるやり方なのだ。 

作業はいつもひとりで行う。シーンの複雑さや細かさによっては、セットを組み立てて場面を完成させるまで、1週間から1カ月かかることもある。

たとえ人々が目にするのは完成した写真だけでも、時間を十分にかけて念入りにつくってゆくことにこそ充実感を覚える、とヘルナンデスは言う。新しい世界を生み出すことに夢中になっていると、1人きりでおもちゃで遊んでいた子ども時代に戻ったような気持ちになるそうだ。

「わたしにとっていちばん大切なのは、完成した作品ではありません。そこまでたどり着く過程が大切なのです」

写真は、ヘルナンデスの大好きな映画や、米国のテレビドラマ『爆発!デューク』などが元になっている。PHOTOGRAPH BY FELIX HERNANDEZ