ボーイングの「巨大ドローン」は、物流革命の旗手になれるか 自動車サイズの「空飛ぶ機械」が向かう先

 

 ボーイングの実験開発部門「ホライゾンX」が、約230kgの荷物を30km離れたところまで運べる大型の貨物ドローンのプロトタイプを開発した。自動車サイズの巨大ドローンが一般家庭を訪れることはないかもしれないが、物流を大きく変える可能性を秘めているのだという。「空飛ぶ機械」を熟知したボーイングならではの戦略が、そこにはあった。

50人からなる開発チームは3カ月をかけて、組立玩具の「エレクター・セット」でつくったような自動車サイズのドローンを開発した。全長1.8mほどの回転翼を8枚搭載し、重さは747ポンド(約340kg)だ。PHOTOGRAPH COURTESY OF BOEING

「ドローン配送の時代」と聞いて誰もが思い浮かべるのは、次のような風景ではないだろうか。

小さくてかわいいクアッドコプターが、静かな音とともに玄関に下りてくる。おむつやピザなど、オンラインで注文されたばかりの商品が入った箱を降ろすと、拠点にとんぼ返りして次の配送に備える--。これは、アマゾンやユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)、ドイツのDHL[日本語版記事]などが宣伝している魅力的なヴィジョンだ。

しかし、大手航空機会社のボーイングが考えているものはこれとは別物だ。機体がかなり大きいのだ。ボーイングは1月10日(米国時間)、500ポンド(約230kg)の荷物を30km離れたところまで運べる電動無人貨物輸送機のプロトタイプの開発を発表した

この積載量は、ドミノ・ピザのLサイズなら400枚、新生児サイズのおむつなら11,291枚に相当する。ただし、この巨大ドローンの行き先は皆さんの家ではない。

全長1.8mの回転翼が8枚

実際のところ、このドローン(キャッチーな通称はまだ決まっていない)が向かう先は、ボーイングにもよくわかっていない。「始まったばかりの市場と、始まったばかりの技術を同時に探っています」と語るピート・クンツは、このドローンを開発しているボーイング・ホライゾンXのチーフテクノロジストだ。ボーイング・ホライゾンXは、ボーイングの実験開発チームとヴェンチャーキャピタル部門のハイブリッドである。

50人からなる開発チームは3カ月かけて、組立玩具の「エレクター・セット」でつくったような自動車サイズのドローンを開発した。全長1.8mほどの回転翼を8枚搭載し、重さはボーイング747と同じ数字の747ポンド(約340kg)。障害物を探知しながら飛行するコンポーネントとソフトウェアは、ホライゾンXが投資しているNear Earth Autonomy(本拠地はペンシルヴェニア州ピッツバーグ)によるものだ。

最初のテストラウンドが、ミズーリ州にあるボーイングの自律システム研究所で完了し、スキルの強化を始められるようになった。今回のプロトタイプは約15分の飛行が可能で、約70kgの荷物を運べる。だが遠くない将来、積載可能重量は110~230kgまでには必ずなると開発チームは考えている。飛行スピードは時速95~110kmになり、スピードも高度も短距離配送には十分なものになるとチームでは予測している。

何をどこに運ぶのか、正確なところはまだ決まっていない。商業化についての具体的な計画や予定はないが、ホライゾンXのシニアディレクターであるローガン・ジョーンズによると、洋上の石油リグに備品を運ぶなど、現在ヘリコプターで行っていて高額なパイロットが必要な、「3D(dull, dirty, and dangerous:単調、汚い、危険)」といわれる仕事を、このドローンに任せられるかもしれないという。

また、港から配送センター、あるいは配送センターから店舗へとパレットを運べるかもしれない。「人々の玄関先に姿を見せることにはならないでしょう」とジョーンズは語る。現在は民生用のプロジェクトだが、戦闘地域への物資運搬のような軍事応用の可能性も容易に想像できる。

みなさんが思い描くドローン配送とは違うかもしれないが、この種のドローンならではの実用性がある。「現実の世界で仕事ができる可能性が見えてきています」と語るのは、トラック運送の仲介業者トランスフィックスの最高経営責任者(CEO)、ドリュー・マッケルロイだ。

大量輸送と個人輸送の間というニーズ

この15年ほどで宅配の需要は増えており、荷物は小さくなり、配達先が細かくなっている。従来は配送トラックがウォルマートに商品を運び、消費者がクルマでウォルマートに買い物に出かけて商品を自宅に持ち帰るのが普通だったが、こうした古いモデルは消滅しつつあるとマッケルロイは語る。海路による大規模な大量輸送と、靴箱ほどの大きさをしたパッケージによる宅配との間を埋められる輸送手段には、活躍のチャンスがあるのだ。

また、フェリーでしか本土と結ばれていない石油リグや、島などまで飛べるドローンをつくるほうが商業サーヴィスは容易かもしれないと語るのは、ワシントン大学のサプライチェーン輸送ロジスティクスセンターの創設ディレクターであるアン・グッドチャイルドだ。「この規模の輸送のほうが、小さなドローンよりもおそらく実現には近いでしょう」

小型ドローン群を米国の都市部で飛ばすのは、流通拠点からであれ、巡回するトラックからであれ[日本語版記事]、規制と政治の問題が無数にある。もっと田舎のほうが、あるいは指定の発着パッドが使えるような制御された環境のほうが、ドローンは簡単に飛べるはずだ。そして航空機の建造と認定について、ボーイングほど詳しい企業はそう見当たらない。

だからしばらくは、おむつやピザを家で受け取る際には、ドローンの音ではなくドアベルの音を聞くことになるだろう。石油リグで生活しているとすれば、ドローンがやってくる日は近いかもしれないが。