爆発後に何度もよみがえる「ゾンビ星」が観測される

 

 一度は超新星爆発によって“死んだ”はずの星が再び輝き始め、なぜか二度目の最後を迎えていった--。まるでゾンビのようによみがえる星を、米国の天文学者らが発見した。いったいどのような星なのか、その謎に迫る。

超新星「iPTF14hls」のイメージ。IMAGE COURTESY OF NASA/ESA/G. BACON (STSCI)

これまで超新星爆発とは、巨大な質量をもつ星の終焉だと考えられてきた--。特異な振る舞いをする超新星「iPTF14hls」が見つかるまでは。

このほど『Nature』誌で発表された[PDFファイル]異例の超新星「iPTF14hls」は、爆発したあとも輝くことをやめず、何度も妖しく明滅を繰り返しながら、通常の10倍という長い時間をかけて暗くなっていった。しかも驚くことにiPTF14hlsは、過去に一度“死んで”いた--それがまるで「ゾンビ」のように復活し、生ける屍のごとく二度目の死を迎えていたのだ。

発見当初は何の変哲もない星だと思われたが…

2014年9月、天文学者らはひとつの超新星を、米カリフォルニア州サンディエゴ近くにあるパロマー天文台の全自動掃天観測システムで検出した。5億光年先のおおぐま座に位置するしていた超新星が、iPTF14hlsだった。爆発からの光度の変化と吸収線スペクトル分析からiPTF14hlsは、水素の吸収線が見られる「タイプII-P型」超新星と分類された。

iPTF14hlsは最初、このタイプとしては何の変哲もない、極めて正常なふるまいをしていると思われていた。タイプII-P型の超新星爆発は、総じて光度が一定となる約100日間の平坦期を迎えたあと、徐々に暗くなるパターンをたどる。iPTF14hlsも同じだと考えられており、天文学者たちは特に関心を抱かなかったという。

ところが135日~140日が経っても、iPTF14hlsは変わらず輝き続けた。そればかりか、普通ならはとっくに闇に呑まれているはずの超新星は、徐々に輝きを増していたという。

それから600日目まで、iPTF14hlsは5度も明滅を繰り返した。さらに過去のデータをから、驚くことに1954年にも一度爆発していたことが判明したのだ。つまり、60年前に一度“死んだ”はずの星がゾンビのように復活し、再び2014年に爆発していたことになる。

「この超新星は、超新星爆発がどのように振る舞うのかという知見を、ことごとく粉砕してくれました」と説明するのは、研究を率いたカリフォルニア大学サンタバーバラ校の天文学者イアー・アーカヴィ博士である。「星の爆発について10年ほど研究していたなかで突き当たった最大の謎です」

宇宙初期に数多く存在していたという超巨大な星の死

研究者らは、iPTF14hlsの質量を太陽の約50倍以上と推定した。これまでの超新星爆発のなかでも最大規模だといい、その巨大な質量が従来のモデルで説明できなかったひとつの要因だとしている。これは理論上予見されていた、「脈動性対不安定型超新星」の最初の観測だった可能性がある。

カリフォルニア大学バークレー校のダニエル・カセン准教授は、「今回の超新星爆発は理論上、巨大な質量をもつ星の高温の核のなかで反物質が生成された結果なのかもしれません」と説明する。「それは恒星を激しく不安定にし、何年もかけて明るい爆発を繰り返すのです」

対不安定型超新星とは、太陽の95~130倍の質量をもつ恒星が超新星爆発を起こす際にみられる現象で、宇宙初期には数多く存在していたと思われる巨大な恒星が迎えただろう結末だ。iPTF14hlsも、最後の爆発が起きてブラックホールに姿を変えるまで、何十年も“爆死”を繰り返す可能性がある。

「恐竜がいまの時代に発見されたようなものです」と、ハワイのオアフ島にあるラス・クンブレス天文台のアンディ・ハウエルは驚きを隠さない。「この類の超新星爆発は初期の宇宙にだけ存在していて、もはや絶滅したものと思われていました。もしこんなものを見つけてしまったら、本当に“恐竜”かどうか疑ってしまいますよ」

しかしiPTF14hlsは、対不安定型超新星としてはエネルギーが大きすぎるなど、完全に一致しない部分もあり、まったく別のタイプの超新星である可能性も否めない。研究者らは異例の超新星爆発を究明するため、ほかにもiPTF14hlsと似たような振る舞いをする「ゾンビ星」が現れるのを心待ちにしているという。