日産の新しいコンセプトカーは、「歌う」ことで街の景色を変える

 

 日産自動車が、電気自動車が歩行者などに接近を知らせる新しい音を、東京モーターショーで発表した。イタリア語の「歌う」という意味から「カント」と名付けられたこの接近音から見えてくる、「未来の街」の風景とは。

東京モーターショーで、日産自動車は自動運転技術を搭載した新しい電気自動車(EV)のコンセプトモデル「IMx」を公開した。これはなんと“歌う”のである。まるで力強い弦楽四重奏のアーティストが、音をチューニングしているようだ。

「カント(canto)」(イタリア語で文字通り「歌う」という意味)と名付けられたその音は、歩行者にEVの接近を知らせるものだ。このため、EVが低速で走行しているときに作動する。

EVやハイブリッド車(HV)は加速が鋭く、一般的には内燃機関のエンジンを使うクルマより環境負荷が少ない。そして騒々しい道路に囲まれて暮らすことにうんざりしている人々にとっては、実にありがたい存在となる。甲高くて控えめなモーターの音は、ガソリン車のようにうるさく鳴り響かない。

しかしそれは、一般の歩行者やサイクリスト、特に視覚障害者にとっては厄介なものになる。エンジン音は、クルマが接近中であり、道を渡ってはいけないことを知らせてくれる重要な警告になるからだ。米運輸省道路交通安全局(NHTSA)の調査によると、歩行者が衝突事故に巻き込まれる確率が、HVの場合は従来のクルマに比べて35パーセント高く、自転車に乗った人の場合は57パーセント高くなることがわかっている。

米政府はこのことを問題視し、NHTSAは2015年に新たに安全基準を発表した。EVが時速19マイル(約30km)未満で走行するときに、人が聞き取れる音を発するよう義務づけたのだ(時速19マイル以上で走行する場合は、タイヤの音やクルマが風を切る音が十分に聞き取れる)。

これにより、自動車メーカーは18年の秋までに、EVにこの機能を搭載し始めなければならない。だが、トランプ政権は規制緩和推進の一環として、この制度の廃止について検討していると報じられている(NHTSAはこれに対して直ちにコメントを出すことはなかった)。

しかし、日産は開発を続けている。11年に発売したEV「日産リーフ」で歩行者向けの警告音機能を初めて搭載し、さらに進化させたのだ。今回発表された「カント」では、音の高さが加速、減速、後退それぞれの状態に合わせて変化するよう、さらに改良されている。

日産の開発担当者は、歩行者への警告はもちろんのこと、「街中の道路の音が豊かになるように」心がけてに設計したと話す。もし街中の道路から80年代ロックのシンセサイザーのような音が自然に聞こえてきたら、この日産のクロスオーバーコンセプトが街にうまく溶け込んだということだろう。

ほかのメーカーも負けてはいない。ゼネラルモーターズ(GM)の「シボレー ボルト」、トヨタ自動車のHV「プリウス」「RAV4」などで、実にさまざまな音が楽しめる。デザインスタジオのustwoは、これまで3種類の自動車接近音のコンセプトを作成[日本語版記事]しており、まるでエレクトロニック・ダンス・ミュージック(EDM)のダンスフロアーさながらだ。

未来のクルマの音は、いまと少し違っているかもしれない。それでも音を奏でていることは間違いないだろう。