EVで甦る「最も美しいジャガー」と「2020年までに全車種EV化」の狙い

 

 ジャガーランドローバーが、2020年までに全車種のEVモデルを生産すると発表した。また、史上最も美しいクルマと称された「Eタイプ」のEV「Eタイプ・ゼロ」も発表している。従来のオーナーがEVであることを優先してテスラなど他社のクルマに乗り換えないようにするうえでは、理にかなった決断だといえそうだ。

イーロン・マスクには申し訳ないが、電気駆動と美しさを兼ね備えることについて、世界に新たな支配者が現れた。ジャガーランドローバーは9月7日(米国時間)、「Eタイプ・ゼロ」を発表したのだ。これは、フェラーリの創設者エンツォ・フェラーリが史上最も美しいクルマと称した1960年代のクラシック・スポーツカー「Eタイプ」を、バッテリー電源で蘇らせたものだ。

残念なのは、40kWhのバッテリーパック装備、1回の充電で約270km走行可能、停止状態から5.5秒で時速約96kmに達するというスペックがリアルなものではなく、まだコンセプトでしかないということだ。ジャガーは、「このコンセプトを市場に出すための研究を進める」と述べているが、同社が今後どう判断しようと、これはいわゆる「釣り広告」にすぎないといえるだろう。

ポジション争い

歴史的最高傑作が電気で走るというコンセプトは、ジャガーランドローバー(とジャーナリスト)にとっては、身震いするような発想だ。これは、同時に発表された同社の未来に関するニュースへとスムーズにつながっている。同社は、2020年までに全車種のEVまたはハイブリッド車を提供すると明らかにしたのだ。この転換は18年から始まり、まずはジャガー初の完全電気SUV「I-Pace」が発売される。

2017年7月に同様のEV化計画を発表したボルボとは異なり、ジャガーランドローバーの場合は車種を増やすのであって、ガソリン車やディーゼル車を段階的に廃止するわけではない。さらに、ボルボやジャガーランドローバーによるこうした動きは、新技術にすべてを賭けるクレイジーで大胆すぎる動きなわけではない。将来の自動車界に、自社の占める位置を確保するための動きなのだ。

「それはほぼ避けられない動きです」と語るのは、Kelley Blue Bookの自動車産業アナリスト、カール・ブラウアーだ。ジャガーランドローバーのような自動車メーカーは、将来EVとハイブリッド車の選択肢を増やしていくだろうと同氏は述べる。

ジャガーが自ら行った予言によれば、完全なEVだけでなく、プラグインハイブリッド車やエンジンの補助としてバッテリーを使用する「マイルドハイブリッド車」が含まれていることが重要だという。つまり、これはテスラの猿真似というわけではないのだ。バッテリー技術のコストが徐々に低下している現状を踏まえ、ブラウアーは、ハイブリッド技術は燃料噴射と比肩しうる存在になりつつあると指摘する。

「ハイブリッド技術は、風変わりな技術からコスト削減を実現できる技術へと変わりました」。間もなく、「あらゆるクルマがある程度のハイブリッド技術を備えるようになる[日本語版記事]」と、ブラウアーは予測している。

それと同時に、世界中の政府が、自動車メーカーが排ガスゼロ車(ZEV)を生産する際に遵守すべき燃料効率の基準と要件の両方を増やしている(前者についてはハイブリッド技術が貢献している)。トランプ政権がいくら米国の規制を緩めようとしていても、世界中の規制当局、特にヨーロッパとアジアでは、自動車メーカーを揺るがすだけの影響力をもっている。英国とフランスでは、2040年までにガソリン車とディーゼル車の販売を禁止する計画だ。ノルウェーはこれを25年中に実現したいと考えている。中国ではEVについて非常に厳しいベンチマークを設定したため、自動車メーカーからは達成するのは無理だという苦情が出ている

ゆえに、ジャガーランドローバーからすれば、人々が自国で運転できる高級車としてテスラのような競争相手に乗り換えずにすむようにして顧客として確保しようとするのは、理にかなっている。また、同社の顧客たちが裕福であることも助けになるはずだ。米国では、ジャガーの平均価格は約5万5,000ドルで、ランドローバーの平均価格は7万ドルを超える。バッテリー(EVのコストが高くなる主要因)の搭載によってスポーツカーの価格が数百ドルあるいは数千ドル上がったとしても、彼らはたぶん気にしないだろう。そのスポーツカーが、21世紀のEタイプならなおさらだ。