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【ビブリオエッセー】あっさり謎解き猫丸先輩 「日曜の夜は出たくない」倉知淳(創元推理文庫)

 ミステリー小説といえば、探偵役の主人公のところに事件調査の依頼が来たり、たまたま事件現場に居合わせたりするなんて場面から始まることがよくあるが、本書は少し違う。短編7本のすべてに共通して、探偵役の猫丸先輩がなかなか登場しないのだ。

 それぞれの短編にそれぞれの主役がいて、猫丸先輩は脇役としてちょこっと顔を出してあっさりと事件を解決していく、そんなカジュアルなストーリー展開が新鮮だった。だから謎解きもさることながら、どのタイミングでどんなふうに猫丸先輩が登場するのかを予想しながら読んでいくのも楽しい。

 短編の3本目「海に棲む河童」は河童伝説がテーマだ。海に出会いを求めてやってきた二人の青年。しかし海開き前の肌寒い日だったからお目当ての出会いなどない。このまま帰るのも癪だと孤島巡りの遊覧船に乗った。

 遊覧船とは名ばかりの頼りない小舟に船頭のアルバイトとして登場するのが小柄な三十男、猫丸先輩だ。操船も頼りなく、波に流されて一行は小さな島に漂着した。そこで猫丸先輩は助けを待つ間、青年の一人が語った凄惨な河童伝説の真相を解き明かす。

 新鮮な展開は短編に留まらず、全体を通しても言えるだろう。ばらばらだと思っていた短編がすべてつながり、最後は著者まで物語に登場するのだ。7本の短編をある方法で並び変えるとメッセージが浮かび上がった。

 さらにその奥に驚きの真相。これはフィクションなのか、いやノンフィクションみたいにも思えて、疑念が頭の中を駆け巡る。

 読み終えた今、短編の表題でもある『日曜の夜は出たくない』という書名にも特別な秘密が隠されているのでは、とまだ疑っている。

 堺市堺区 西藤はやて 26

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