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【ビブリオエッセー】世界を救うふたりの世界 「塩の街」有川浩(角川文庫)

 この本を読んだのは中学の頃だった。空の彼方からの落下物、それは塩の結晶らしいのだが、地球が「塩害」により滅亡の危機にある終末世界の物語だ。人々の支えは愛。守りたい誰かがいるから世界を救うというロマンチックなところに感激したのを覚えている。

 あまり本を読まないのだが、友達に薦められ朝読書の時間に読んでみたところ止まらなくなり、二日で読み終えた。読むのが遅い私にとって快挙だったがなぜあれほどスラスラ読めたのか。今回再読し、結末を知っているのにまたのめりこんだ。物語の力を感じる。

 町が、人々が「塩化」してゆき、塩の柱が林立する光景。飛来して半年で日本は推定八千万の人口を失う。ゴーストタウンで生き残った人々の歩みと最後の抵抗が、真奈と秋庭、ふたりの男女の物語を軸に進行する。日常的な設定や場面が世界の終わりと救済につながっている。「セカイ系」というジャンルがあると教えてもらったがこんな感じなのだろうか。

 なにより今になっても細部まで覚えていることに驚いた。秋庭の同僚、入江が語るこんなセリフが印象に残っている。愛は世界を救うというキャッチコピーを揶揄して「愛は世界なんか救わないよ。賭けてもいい。愛なんてね、関わった当事者たちしか救わないんだよ」。

 ところが真奈と秋庭らは立ち上がる。自分たちの、地球の未来のため、ある計画に参加するのだ。自衛隊が活躍する展開も有川さんの作品ならではだろう。結末は書けないが…。

 今では流行作家の有川さんが書いたデビュー作だという。最初からこんなに面白い。不器用な感じのふたりがお互いの思いに気づいてゆくこの小説。やっぱり愛は世界を救うのだ。

 京都府京田辺市 藤本爽夏 20

      ◇

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