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【ダニーの食読草紙】美味なる謎追う美食家探偵

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 美食家の名探偵といえば、ネロ・ウルフの名が上がるだろう。美食と蘭の花を愛する彼は、普段はニューヨークで探偵業を営んでいる。

 彼自身は滅多(めった)に外出せず、助手のアーチーやその他の調査員たちに捜査を任せ、お抱えの料理人や園芸係と美食や蘭を楽しむ優雅な生活を送っている。そう、彼はもたらされた情報からその場に居ながらにして事件を解決する、所謂(いわゆる)安楽椅子探偵なのである。

 そんな彼も、美食のためならば外出することもある。シリーズ第5作「料理長が多すぎる」では、「ソーシス・ミニュイ」と呼ばれるソーセージの作り方を知るために重い腰を上げる。このソーセージへのネロ・ウルフの入れ込み方は半端ではない。

 25年前にこのソーセージに出会ったネロは、作り手であるヘローメ・ベリンがその作り方を秘しているため、わざわざ四度も彼のレストランに調査員を派遣し、持って帰らせ、あらゆる方法で分析を試みた。

 こうした努力にもかかわらず、ソーシス・ミニュイのレシピを再現できなかったネロ・ウルフはついに本人にレシピを譲ってくれるよう交渉に入るが、にべもなく断られる。ところがその後にベリンの憎む男が殺され、ベリンに容疑がかかり……というふうに事件は展開していくこととなる。

 作品にはソーシス・ミニュイそのものの描写は出てこないが、他の美味しそうな料理の描写を見るにつけ、それらより更に追い求められるソーセージとはいかなるものなのか、を口中にて想像させられ、肉汁が溢れてくる気分を味わえる。犯人を追っているはずが、味を追ってしまうことになりかねない一冊である。   (将棋棋士 糸谷哲郎八段)

■「料理長が多すぎる」…アメリカの人気作家、レックス・スタウト(1886~1975年)のネロ・ウルフシリーズの一作。

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