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「間に合わない」ワクチン接種、自治体の連携体制広がる

 新型コロナウイルスのワクチン接種をめぐり、医療施設の少ない複数の自治体が連携して接種にあたる動きが広がっている。過疎化が進む地方が中心で、医療資源を集約して効率的に活用するのが狙いだ。ただ、通常医療と並行する形で行うため、政府が想定する接種スケジュールには「間に合わない」と焦る自治体も。65歳以上の高齢者約3600万人に対する接種が4月に迫る中、各自治体は急ピッチで体制づくりにあたっている。(田中一毅、前原彩希)

3町が合同接種

 限られた期間内に多くの人への接種が計画される今回のワクチン接種。厚生労働省は身近な医療機関での個別接種を中心とする「練馬区モデル」をはじめ、地域の実情にあった接種体制をつくるよう全国の自治体に周知している。

 奈良県では、中南部に位置し、過疎化が深刻な大淀、吉野、下市の3つの町が連携して合同接種を実施する方針。人口約6600人の吉野町は接種に対応できる個人医院や病院が4つ、約5千人が暮らす下市町の場合は1つしかないため、拠点病院「南奈良総合医療センター」や民間の医療機関7つがある大淀町(人口約1万7千人)が昨年12月に呼びかけ、協議を重ねてきた。

 同町の担当者は「医療スタッフの確保や会場準備を効率的に行える。ワクチンも3町で一括することで、余らせることなく、無駄も抑えられる」とする。合同接種の会場は、センターに隣接する南奈良看護専門学校の体育館。吉野町の担当者は「町内で接種を実施し、重篤な副反応が出た場合、センターに搬送するまで約30分かかる。合同接種は心強い」と話した。

土日の接種も

課題もある。現時点で、3町の合同接種は平日の午後1時半~同3時半の2時間を計画。1日あたり計100人の接種を予定する。

 だが、厚労省の計画では高齢者への接種は約3カ月間で完了する想定。大淀町によると、3町の計画では大淀町の高齢者約6千人の接種完了だけでも、1年3カ月以上かかるという。

 このため、3町は地域の医療機関でもワクチン接種を可能とすることや、土日にも接種できるよう、さらなる医療従事者の確保のため、地元医師会と調整を続けている。吉野町では体が不自由な高齢者には戸別訪問での接種も検討。大淀町の担当者は「厚労省の期限はかなりタイトだが、やれるだけやるしかない」と話す。

個別接種などでも連携

 小規模な自治体による連携体制は、他の地域でも検討されている。

 計約9万7千人が住む山梨県の6市町村(富士吉田市、西桂町、忍(おし)野(の)村、山中湖村、鳴沢村、富士河口湖町)では、合同接種会場を富士吉田市の市立病院近くの体育館に設置するほか、公民館や医療機関などにもサテライトの集団接種会場を設ける予定。「会場が増えるほど医療スタッフの確保が必要」(同市担当者)と、医師会との調整を続ける。

 計約4万5千人が住む福島県7町村(会津坂下町、湯川村、柳津町、三島町、金山町、昭和村、会津美里町)には、医師が一人もいない「無医村」もある。このため、区域内の医療機関で個別接種や集団接種を連携して実施する計画だ。

 会津坂下町の担当者は、「居住地以外の地域に『かかりつけ医』がある人や、抱えている基礎疾患によっては、居住地の医療機関で接種できない人もいる」と指摘。「医療機関の少なさを広域でカバーし、安心して接種してもらいたい」と話した。

費用面に不安も

 円滑なワクチン接種には医師や看護師の十分な確保に加え、各自治体が実情に合わせた効率的な接種体制をいかに進められるかが鍵を握る。

 地域医療に詳しい城西大学経営学部の伊(い)関(せき)友(とも)伸(とし)教授は、「地域によって医療状況などは千差万別。国も統一の基準は出せず、自治体は試行錯誤で始めざるを得ない」と指摘。ワクチン接種をめぐっては、副反応への対応や会場での「密」対策など、多岐にわたる課題をクリアしなければならず、「各自治体はさまざまな想定を考え、地元医師会と連携しつつ準備を進める必要がある。まさに自治体の力が問われる」とする。

 費用面も懸念材料だ。昨年12月に成立した改正予防接種法では、ワクチン接種に必要な費用を国が全額負担すると定める。河野太郎ワクチン担当相は今月1日、ワクチン接種体制事業にかかる予算額を総額約1360億円から約2700億円に増額すると表明したが、自治体の担当者の中には不安の声もある。

 現場でのワクチン接種にからむ経費は、住民の問い合わせに対応するコールセンターの設置や会場運営費、会場までの交通費など。接種期間が延びれば延びるほどかさむものだ。奈良県のある自治体の担当者は「国がどこまで予算措置するか、わからない」と話す。伊関教授は「財政措置は手厚くしないとトラブルが起きる。想像以上に予算がかかるかもしれないが、柔軟に対応することが、命を守ることにつながる」と指摘した。

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