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【勇者の物語~「虎番疾風録」番外編~田所龍一】(168)山口の失投 来てくれストレート…通じた祈り

第3戦、サヨナラホームランを放った河埜を笑顔で迎えた長嶋監督=後楽園球場
第3戦、サヨナラホームランを放った河埜を笑顔で迎えた長嶋監督=後楽園球場

 「人工芝の匂いをかげば…」と長嶋監督が祈った第3戦は、1点を争う展開となった。阪急が五回に1点を先制すればその裏、王が山口から右翼へ2号逆転2ラン。九回には島谷が左翼へ同点ホームランを放ち、試合は延長戦へ突入した。

◇第3戦 10月25日 後楽園球場

阪急 000 010 001 000=2

巨人 000 020 000 003x=5

【勝】浅野1勝 【敗】山口1敗

【本】王②(山口)島谷①(加藤初)河埜①(山口)

 ドラマは延長十二回に起こった。巨人は先頭の上田が阪急の2番手・山口から左前安打。末次がバントで送り、続く柴田が敬遠の四球で1死一、二塁。ここで長嶋監督は次打者の河埜を呼んだ。

 「いいか、真っすぐに狙いを絞れ。他のタマは捨てて、思いっ切り振れ」

 河埜は無言でうなずいた。

 「監督のひと言で気持ちが軽くなった」という。「来たタマにバットを出せばどこかに飛んでくれるだろう」とそんなふうに。

 山口は3球続けてカーブを投げてきた。たちまち2-1と追い込まれる。来てくれストレート…河埜の祈りが通じた。4球目、待っていたストレートを思いっ切り振った。「打った感触はなかった」という打球は左翼中段に飛び込むサヨナラ3ランとなった。

 「いまも爆発しそうなほどドキドキしています。夢みたい。ボク本当に打ったんですよね」。初めて立ったシリーズのお立ち台で河埜は震えていた。

 愛媛・八幡浜工高から昭和44年のドラフト6位指名。入団8年目の25歳。この年、初めて規定打席に到達し、打率・294で打撃30傑の20位に入った。

 ネット裏で野村克也が山口の失投をこう分析した。

 「山口には速球のストライクで勝負するのではなく、ボール気味に投げる配慮が欲しかった。ボールで2-2になっても5球目は的が絞りにくい。20~30%はカーブを考えるだろうし、そうすればあんなフルスイングはできなかった」

 慎重さを欠き第3戦を落とした阪急。長嶋監督の予想通り、人工芝で巨人は甦るのか…。おもしろくなってきた。

(敬称略)

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