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【ビブリオエッセー】名著味わうよろこび 「論語と算盤」渋沢栄一(角川ソフィア文庫)

 新一万円札の新しい「顔」に決まった渋沢栄一。今月から始まるNHK大河ドラマ『青天を衝け』の主人公でもある。まさに今年は、日本の資本主義、実業界の礎を築いた渋沢再評価の幕開けといえよう。

 本書『論語と算盤』は渋沢の「長い民間時代に行なった訓話が集められて、昭和二年に忠誠堂から出版された初版を底本として刊行」されたものである。現代仮名遣い、当用漢字に改められ、かつ加地伸行氏の訳注や解説が付いて随分読みやすくなっている。

 このなかで渋沢は「論語と算盤とは一致すべきものである」と喝破している。その意味するところは、「国を治め民を済うためには道徳が必要であるから、経済と道徳とを調和せねばならぬ」というのである。このことに関連して、かつての昭憲皇太后の御歌「もつ人の心によりて宝とも仇ともなるは黄金なりけり」を名歌として引用しているが、この本には紹介したい金言が綺羅星のごとく並んでいる。

 さらに挙げると、常識とは「事に当たりて奇矯に馳せず、頑固に陥らず、是非善悪を見別け、利害得失を識別し、言語挙動すべて中庸に適うものがそれである」。思わず納得の一文だ。あるいは富について。それまでの解釈の誤解を戒め、「孔子の言わんと欲する所は、道理を有た富貴でなければ、むしろ貧賤の方がよいが、もし正しい道理を踏んで得たる富貴ならば、あえて差し支えないとの意である」と書く。そして実業教育は「智育と徳育とを併行せしめて行きたいもの」。渋沢の語る徳育の重要性は現代人こそ耳を傾けるべきだろう。

 何度でも読み返したい知恵の書だ。とにかくじっくり読み、その心を味わいたい。

 大阪府茨木市 浅野素雄 90

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