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G20でも提供 大阪名物「泉だこ」ブランド化への道のり

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 大阪名物・たこ焼きに欠かせない、関西になくてはならない食材のタコ。関西で圧倒的な知名度を誇るのは兵庫県産の「明石ダコ」だが、実は、地元、大阪にもブランド化したタコがある。泉州地域産の天然ものの「泉(いずみ)だこ」だ。魚庭(なにわ)の海ともいわれる大阪湾で育まれる豊富な魚介類を代表する味にしたい-。地元の漁協関係者の熱い思いがブランドを育てている。 (小川恵理子)

“無名”タコを商標に

 歯応えはあるが、身は柔らかく、ほのかな甘みが口いっぱいに広がる-。

 平成22年、泉だこは、特許庁に地域団体商標として登録された。登録は、ブランド力を強め、模倣などを対策するために、地域名と商品名を掛け合わせた名物を登録できる特許庁の制度。タコとしては全国で初めての快挙だった。

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 「大阪の魚の価値向上の起爆剤として期待されていました」

 大阪府漁業協同組合連合会の松田智克さん(39)はそう話す。

 約15年前、漁連は、大阪の海産物をPRするために商標登録しようと動き出した。そこで白羽の矢が立ったのが、安定した水揚げ量があった泉だこだった。砂地が多い大阪湾には、タコの餌となるエビやカニなどが豊富に生息。泉州地域の遺跡には、弥生時代からタコ漁が行われていたことを示す出土品も残り、長く地元で愛されてきた味だ。

「蛸地蔵」として親しまれる天性寺の絵馬。タコを絶つというユニークな願掛けがある=岸和田市
「蛸地蔵」として親しまれる天性寺の絵馬。タコを絶つというユニークな願掛けがある=岸和田市
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 ただ、登録するには「隣接府県で知名度を持つこと」という条件が付いていた。実は、産地の泉州地域以外では府内でもほぼ無名。漁連は知名度アップに奔走することになる。

大阪で知名度獲得を

 漁連職員らは、近隣府県で開かれるイベントやスーパーでの試食販売などPRに打って出た。

 泉だこ最大の特徴は、身の柔らかさだ。明石ダコは、潮の流れが速い明石海峡で育つため、身が締まって歯応えがあるのに対して、潮流が穏やかな泉州沖で育つ泉だこは柔らかく、ほのかな甘みを感じる。

 試食販売では、そうした特徴や「ぶつ切りにしてしょうゆとワサビで食べると風味が生きる」「タコに塩とごま油、ネギをかけて食べるとおいしい」などおすすめの食べ方も伝えた。地道に販売実績を積み上げて、4年かけて登録にこぎつけた。

延命地蔵菩薩が納められる天性寺。地元住民からは蛸地蔵として親しまれる=岸和田市
延命地蔵菩薩が納められる天性寺。地元住民からは蛸地蔵として親しまれる=岸和田市
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 そして一昨年には、大阪市で開かれた20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)でも提供されるまでになった。

高校生もPR

 ブランドを広めるために協力する若い人たちも現れた。岸和田市立産業高校(大阪府岸和田市)の商品開発クラブでは28年度から令和元年度まで、泉だこを使った丼やおかしなどの開発を行ってきた。

 たこ焼き風の味付けを施した丼やバター風味のおにぎり、天ぷらなどを開発。地元のイベントなどで披露すると好評を得た。一昨年は、泉だこの風味をより引き出そうと、加熱調理せずにそのまま食べてもらうための万能たれ「みそこんぶもん」を売り出した。

 29年に、泉だこを振る舞った後に対象に行ったアンケートでは、「泉だこを知らない」と答えた人は約6割にのぼったが、30年では約4割までに減ったのも活動の成果とみる。元部長で3年生の貞國早映さん(18)は「新聞などでも泉だこが取り上げられる機会が増えたけれど、私たちの活動で知ったという人もいたことがうれしい。知名度向上に効果があったと思う」と自負する。

 販売価格は海外産と比べても2~3割高い。天然ものなので豊漁と不漁の差が大きく、現在も取扱店舗は泉州地域に限られている。しかし、そんな貴重な味だからこそ、地元の人たちはブランド化して守ろうとしている。漁連の松田さんは「店舗などに安定して供給し続ける。地元、大阪で親しまれる味になってほしい」と話している。

 タコと泉州地域の縁は深く、だんじりで知られる岸和田市にはこんな伝説が残る。岸和田城に紀州国から傭兵(ようへい)集団「雑賀衆(さいかしゅう)」らが攻め入った。落城寸前に突然、大きなタコに乗った1人の法師が現れると敵を一掃。後日、城の堀から傷だらけの地蔵が見つかり、後年、近くの天性寺(てんしょうじ)に納められた-。

 そうした由来から同寺には、1~3年間タコを食べない「タコ絶ち」をすれば、願いがかなうというユニークな言い伝えが残る。 その一方で、天性寺の参道商店街として栄えた近くの蛸地蔵商店街では、タコを積極的に食べてもらって、商店街のにぎわい復活や泉だこの知名度アップにつなげようとしている。

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 「いまでは昭和50年代の半分以下までに店舗数は減った」と同商店街の藤本敏明副会長。そこで人を呼び込むために組合員が中心となり、泉だこと泉州玉ねぎを使った特製タコ天を開発。市内のイベントで販売すると、人気を博した。

 「このあたりの人はお食い初めにタコを食べるほど親しみがある。泉だこをきっかけにして蛸地蔵商店街やタコの逸話にも興味を持ってもらえたら」。藤本さんはそう願っている。

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