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宿泊療養施設、低い使用率/本紙記者が現場ルポ 

患者が滞在する部屋の前に並んだ専用のごみ箱。蓋を閉めると開けられない構造で、京都府職員が回収し、専門業者が処分する=1月31日、京都市南区(渡辺恭晃撮影)
患者が滞在する部屋の前に並んだ専用のごみ箱。蓋を閉めると開けられない構造で、京都府職員が回収し、専門業者が処分する=1月31日、京都市南区(渡辺恭晃撮影)
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 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い患者の受け入れ先が課題となる中、緊急事態宣言が発令されている11都府県で、軽症・無症状者が滞在する宿泊療養施設の使用率が50%以下にとどまることが1日、産経新聞の調査で判明した。厚生労働省は容体急変に即応できる宿泊療養を推奨するが、室内の消毒作業に時間を要することなどを理由に、十分に活用できていない状況が浮き彫りとなった。

 11都府県の使用率は、東京24%▽神奈川16%▽千葉33%▽埼玉34%▽栃木30%▽愛知19%▽岐阜15%▽京都19%▽大阪33%▽兵庫41%▽福岡41%(1月末時点)-と、空室が目立つ。

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 厚労省の指針では、軽症・無症状者は宿泊施設での療養が基本だが、1月27日時点で全国で約2万8千室ある宿泊療養施設の入所者は6千人あまりで使用率は約23%。一方、自宅療養者は約2万6千人にのぼる。

 調査では大阪や神奈川など8都府県が使用率が低い主な要因として、清掃・消毒作業をあげた。患者の退所から一定期間後に作業するため、数日~1週間以上かかることもあるという。

 千葉県は業者側と患者との接触を避けるため、各階ごとに作業。1人でもいればその階に新規患者を入れられないため、改善を検討中だ。兵庫県も部屋の消毒などに数日かかるため、フル稼働しても60~70%ほどしか受け入れられない状況にある。

 一方、「消毒の手間以上に自宅療養を希望する患者が多い」とするのは東京都。希望者を受け入れられる態勢は整っているが、「自宅がよい」「幼児がいる」との理由で自宅療養する患者が多いという。

 関西大の高鳥毛(たかとりげ)敏雄教授(公衆衛生学)は、「症状急変のリスクを考えると宿泊療養が安全だ。消毒の効率化などで使用率を上げるとともに、宿泊療養が選択されるよう、各患者の事情に合わせた支援が必要になる」と話した。(井上裕貴、前原彩希)

宿泊療養 緊迫の現場

 新型コロナウイルス感染拡大に伴う医療体制の逼迫(ひっぱく)が進む中、無症状・軽症患者の受け皿として重要性が高まる宿泊療養施設。ただ、産経新聞の調査では、緊急事態宣言下の11都府県の使用率は50%を割り込んでいたことが判明した。全国の宿泊療養者は約6千人。施設では容体急変に備えて医師や看護師が24時間態勢で患者の体調を管理する。京都市内の施設に防護服を着用して取材に入ると、体調急変や二次感染のリスクといった緊張感が常に漂っていた。

 「せきやたん、息苦しさはありませんか」

 1月31日の昼過ぎ、京都府の宿泊療養施設の一つ、ホテルヴィスキオ京都(京都市南区)で医師による問診が始まった。医師はタブレット型端末の画面越しに患者の表情を確認すると、現在の体調や療養中の不安などを丁寧に聞き取っていく。入所後に容体が悪化する患者もおり、医師は「顔色や息遣いなど、ささいな変化に注意を払いながら入院や治療の必要性を判断している」と話す。

24時間態勢で

 このホテルでは全270室のうち、1月31日時点で71人が入所。医師が1日1回問診するほか、看護師が常駐し、24時間態勢でケアする。保健師を含む府職員も滞在し、生活支援や入退所の調整にあたる。

 問診と並行し、入所する患者の受け入れに備えて、府職員らが防護服に身を包んでいく。館内は感染者と非感染者で使用区域が分けられ、感染者が滞在する「レッドゾーン(感染領域)」▽防護服を着脱する「イエローゾーン」▽ウイルスから隔離された「グリーンゾーン(非感染領域)」-の3区域を設定。レッドでは防護服の着用が必須だ。

 患者と接触する場合は、医療用マスクやゴーグル、二重の手袋が必要。数時間着用し続けることもあり、体調不良になる職員もいるという。府健康福祉総務課の松村弘毅課長は「防護服を脱ぐ際に感染リスクが高まるため、作業に慣れた職員でも神経をとがらせる」と説明する。

厳戒のレッドゾーン

 グリーンからガラス扉1枚を隔てたレッドにあるホテルフロントでは、防護服姿の職員が患者を出迎える。患者同士も接触しないよう工夫されており、食事や患者が通販で購入した荷物などは、各階にある部屋番号が記された棚に置かれる。

患者が滞在する「レッドゾーン」の入り口。奥では防護服を着た職員が作業を行っていた=1月31日午後、京都市南区(渡辺恭晃撮影)
患者が滞在する「レッドゾーン」の入り口。奥では防護服を着た職員が作業を行っていた=1月31日午後、京都市南区(渡辺恭晃撮影)
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 11都府県の療養施設の多くでは、消毒・清掃作業の負担が使用率の低下につながっていたが、京都府では部屋ごとに作業しており、感染者数が急増しても受け入れは可能としている。だが、松村課長は「浴室やトイレなどウイルスが残りやすい水回りを重点的に消毒するなど、手間がかかるのも事実だ」と明かす。

 夕方には、退所する回復者の姿も。7日間を過ごした40代女性は「やっと帰宅できる。当初の想像より自由があって快適だった」とほっとした表情をみせた。

 自宅療養中に死亡する感染者が目立つ中、松村課長は「自宅と比べて療養環境は整っており、治療にも専念できる。療養先を選ぶ際は、宿泊療養を検討してほしい」と語った。 (桑村大)

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