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若年がん対応「AYA病棟」休止に、大阪の病院職員ら葛藤

大阪市立総合医療センター=大阪市都島区(本社ヘリから)
大阪市立総合医療センター=大阪市都島区(本社ヘリから)

 新型コロナウイルスの感染拡大に対応するため大阪市立総合医療センター(同市都島区)は今月上旬、「AYA(思春期と若年成人)世代」のがん患者らが入院する専用病棟(38床)を一時休止し、約20人の看護師を配置換えした。信頼関係を構築してきた患者から離れて感染症と対峙(たいじ)する不安と、コロナ治療を担う公立機関の重責。双方を抱えて苦悩する看護師の意欲の低下が懸念されている。

 15歳から30代後半とされるAYA世代のがん患者は、一般病院では小児科や高齢者が多い病棟に振り分けられ、孤立しやすい。一方で進学や就職、出産など人生の転機に直面し不安を抱える年代でもあり、医師や看護師に加え、緩和ケア医、心理療法士、医療ソーシャルワーカーら複数の専門家の支援が必要となる。

 大阪市民病院機構は平成30年、同センターに国内2番目のAYA世代専用病棟を開設。大阪府内外から患者を受け入れ、同年代の交流を促すとともに、社会復帰に向けて学業や就労を支援し、闘病中の外見の変化や治療費などの相談にも対応してきた。

 「看護師らは、さまざまな悩みを持つ幅広い年代の患者に向き合い、助言し、寄り添う。治療と違うケアにあたり、患者と一緒に成長することが財産になる」

 同センターの関係者はこう話すが、新型コロナの感染拡大で状況は一変。「第3波」到来までに婦人科など3病棟を休止し、看護師約80人をコロナ病床に回した。それでも人手は足りず、11月下旬にやむなくAYA病棟の休止を決めた。

 今月7日から看護師24人のうち、15人が中等症専門の市立十三市民病院(同市淀川区)で、9人が同センター内でコロナ治療にあたっている。

 白野倫徳(しらの・みちのり)感染症内科医長は「慣れない現場への突然の配置換えで職員に不安が生じている。AYA病棟の仕事に誇りを持っていた看護師は多く、モチベーション低下の恐れもある。休止の影響は大きい」と懸念を示す。対応が長期化すれば離職者が続出しかねない。

 休止に伴い、患者約20人はそれぞれ別病棟に移り、職員が出向いてケアを続けているが、十分な態勢とはいいがたいのが現状だ。

 一方で、同センターは緊急事態宣言下の4月に一時休止した救急搬送の受け入れを5月には再開し、ギリギリのバランスを取りながらコロナ対応と一般診療の両立を図ってきた。担当者は苦しい胸の内を明かす。

 「コロナ患者を受け入れれば一般診療を制限せざるを得ないが、公立医療機関は『最後の砦(とりで)』だ。職員は終わりが見えない不安と闘いながら、使命感で何とか持ちこたえている」

 AYA世代 思春期と若年成人を意味する「Adolescent and Young Adult」の略で、15歳から30代後半を指す。がん患者数は国内全体の2%程度の年間約2万人と推計され、ほかの世代と比べ少ない一方、白血病や甲状腺がん、乳がんなど年代により診断されるがんの種類が異なる。国が平成30年に策定した「第3期がん対策推進基本計画」は、「小児と成人のはざまで適切な治療が受けられない恐れがある」と指摘し、患者一人一人のニーズに応じた診療・支援体制の整備を課題に挙げている。

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