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最高裁逆転勝訴、泉佐野市の次の一手は「#ふるさと納税3・0」

 ふるさと納税に7月から復帰した大阪府泉佐野市が新境地を模索している。返礼品が地場産品に限定される中、10月には、泉佐野市内で返礼品開発を行う取り組みを支援する新制度「#ふるさと納税3・0」をスタート。地場産品の創出へ市内外の企業が続々と名乗りを上げている。返礼品をめぐる訴訟で国と争い、最高裁で逆転勝訴した同市が、再びふるさと納税を活性化させることができるのか注目される。  (牛島要平) 

自家製ピクルス

 泉州野菜といえば水ナス、タマネギ、キャベツ、ニンジン…。色とりどりの野菜をもっと手軽に味わいたい。そんな声にこたえ、「いずみピクルス」のブランドで事業展開するNSW(同市)が、家庭で簡単にピクルスをつくれる「ピクルスの素」を開発した。

試作で製作しているピクルスの素(上)。ピクルスの素に野菜を入れてピクルスにできる(下)=大阪府泉佐野市(南雲都撮影)
試作で製作しているピクルスの素(上)。ピクルスの素に野菜を入れてピクルスにできる(下)=大阪府泉佐野市(南雲都撮影)
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 カットした野菜を漬け込んで、冷蔵庫に一晩入れておくだけでピクルスができあがる。昆布だしやオリーブオイル、はちみつレモンなど味付けは10種類。ピクルスを「酸っぱい」と敬遠する人でも楽しめそうだ。

 新型コロナウイルスの影響で、直営店での売り上げがコロナ前の6割程度まで落ち込む一方、ネット販売は「巣ごもり需要」で昨年の2倍のペースで伸びている。なかでも「自分でピクルスをつくりたい」というニーズがふくらんでいる。

 「コロナを受けて、以前からやりたかった『ピクルスの素』をきちんと形にしようと思った」。同社の西出喜代彦(にしできよひこ)社長(41)はそう話す。

 開発費や宣伝費の捻出が課題だったが、背中を押したのが泉佐野市が秋から始めた新制度「#ふるさと納税3・0」だった。

 企業から寄せられた返礼品開発のアイデアに対して、ふるさと納税を募る制度。返礼品を目的に寄付するふるさと納税を「1・0」、地域を応援する目的で寄付する場合を「2・0」と位置付け、両方を同時に実現するこの制度を「3・0」と名付けた。

 事業に必要な目標金額を定めてインターネット上で寄付を集めるクラウドファンディング(CF)方式をとり、目標額に達成したら、集まった寄付金は40%を事業所設置などの補助金として企業に支給。30%は市が返礼品を業者から購入する代金、30%は返礼品の送料などの制度運用にかかる経費となる。

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 ピクルスの素を商品化したいNSWは、この制度を利用して、販売サイトのリニューアルやパッケージデザインなどを行いたい考えで、今月31日までに100万円を目標にCFを行っている。CF成立後の返礼品として、ピクルスの素と旬の泉州野菜を毎月届けるパックを提案した。西出社長は「ふるさと納税の返礼品になれば、商品のPRになる」と期待を込める。

地場産業を創出

 これまで市内になかった新しい地場産品を創ろうとする企業も参加している。その一つが、市内のクラフトビール醸造所「泉佐野ブルーイング」で地ビール「KIXビール」の醸造を始めたGrande Limite(京都市)だ。

 ビール醸造では千リットルのビールをつくるごとに約400キログラム(水分含む)の「麦芽かす」が排出される。これまでは廃棄してきたが、実は食物繊維が豊富で、米国などではパンやクッキーの原料として活用する取り組みが進んでいる。

 そこで、同社は麦芽かすを加工して飼料や肥料として農家向けに販売するほか、市内の社会福祉法人などと協力してパンにすることを計画。工場建設と機械設備の導入費を得るために、今月31日までに千万円のCFを募っている。

泉佐野ブルーイングで醸造された「KIXビール」と麦芽かす、麦芽パン=大阪府泉佐野市
泉佐野ブルーイングで醸造された「KIXビール」と麦芽かす、麦芽パン=大阪府泉佐野市
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 同社社長で泉佐野ブルーイングの醸造責任者、許校沿(ほうきょよん)さん(50)は「フードロス(食品の廃棄)を減らす責任を果たしたい。麦芽かすを再利用する意義を訴えるうえで、行政の発信力は大きい」と話す。

企業の挑戦後押し

 今年7月にふるさと納税の新制度に復帰して以降の泉佐野市への寄付額は約3億円。返礼品は「寄付額の3割以下、地場産品に限定」という規制がなかった平成30年度に集めた約498億円、令和元年度(募集は5月まで)の約185億円とは比較にならない。

 ただ、同市が復活の鍵とみているのが返礼品の品ぞろえ。泉州タオルなど現時点で約千種類となり、除外前の水準を回復したが、担当者は「まだまだ増やしたい」と意気込む。

 そこで肉やカニ、コメなどの人気の地場産品が少ないのを逆手に取ったのが「#ふるさと納税3・0」というわけだ。千代松大耕(ひろやす)市長は「返礼品の裾野をどんどん広げていき、全国のモデルケースにしたい」と期待を寄せる。

 今月21日時点で9企業が参加。なかでも、大阪市の丸善食品が実施する、牛肉を熟成させる加工場を市内で建設するプロジェクトはCFで7500万円を募集し、すでに100%超を集めて、目標を達成した。

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 一方でなかなか寄付が伸びない企画もあるが、市の担当者は「返礼品の魅力を納税者に直接判断してもらうことで、企業がチャレンジする環境を整えたい」と話す。

 企業が返礼品のアイデアを出し合い、地場産業を根付かせることができるか。泉佐野市の取り組みは、ふるさと納税制度の将来を占う試みでもある。

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