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燃え盛る建物から社員を救出 作業員らが当時を振り返る 京アニ事件

「助けたいと必死で、恐怖を感じる余裕もなかった」と当時を振り返る大川武志さん(左)と高橋龍児さん=大阪府東大阪市
「助けたいと必死で、恐怖を感じる余裕もなかった」と当時を振り返る大川武志さん(左)と高橋龍児さん=大阪府東大阪市
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 昨年7月のアニメ制作会社「京都アニメーション」の放火殺人事件で、発生時に現場近くに居合わせた人々が協力しあい、消防隊が駆けつける前に燃え盛る建物から社員を救出する一幕があった。事件から1年5カ月。京都地検は16日、殺人罪などで青葉真司容疑者(42)を起訴する見込みだ。4人を助け出した工事作業員らは「助けたいと必死で、恐怖を感じる余裕もなかった」と当時を振り返る。(井上裕貴)

 「近くの駐車場で作業中、ふと見ると目の前の建物から煙が上がっていた」

 昨年7月18日午前10時半すぎ、京都市伏見区の京アニ第1スタジオ裏手の駐車場で、工事を行っていた駐車場建設会社「SAT」(大阪府東大阪市)の大川武志さん(59)と高橋龍児さん(40)は異変に気付いた。

 「火事だ」。すぐに様子を見に行くと、建物3階の外壁にへばり付く男性の姿を目撃。1階の窓からは「助けてください」と叫ぶ女性の声が聞こえた。「何が起こったのか理解できず驚いた」。それでも「何とかしなければ」と急いで車に戻り、はしごやハンマー、バールなど使えそうな工事道具を持って建物へ戻った。

 最初に、女子トイレの窓の外側についた格子をバールで壊して外したが、窓は1人がやっと通れる大きさで、中にいた女性3人を順番に引っ張り出した。大川さんは「もし男性だったら厳しかったかもしれない。それくらい狭かった」と説明する。

 女性らを避難させると、続いて外壁にいた男性の救助へ。建物西側のへりにつかまっていた男性に、はしごがかけられる北側まで壁を伝って移動するよう指示した。手元にあったはしごは約4メートルで、3階には到底届かなかった。それでも、身長163センチの高橋さんがはしごの先端に立って手を伸ばすと、雨どいにぶら下がった男性の足に辛うじて届いた。「信じて降りてきて」と声をかけながら足を手繰り寄せ、体を受け止めた。

 バランスを崩せば自分もけがをする危険があったが、2人は「目の前で助けを求めている人がいるのに放っておくなんてできなかった」。救出を終えた際には、煤(すす)で作業服が真っ黒になっていた。

 事件を機に自らの危機意識も高まり、同社事務所にも避難用はしごを設置。工事現場に向かう車には、3階まで届く約7メートルのはしごを常備している。

 事件後、救出した社員や家族からのお礼や京都市消防局からの表彰を打診されたが、「当たり前のことをしただけ」と辞退した。ただ、「自らの経験が今後の人命救助に役立てば」との思いで取材に応じたとし、救出した4人に対しこう願う。「事件で負った心の傷が少しでも楽になり、世界に誇る京アニの復興という使命を果たしてほしい」

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