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新型コロナで航空貨物業界に好機 スペース不足、専用機の大型化も

 新型コロナウイルスの影響で大きな打撃を受けている航空業界では、貨物輸送にスポットライトがあたっている。旅客便需要が冷え込んだままなのに対して、経済活動を支える貨物便は荷物を満載。行き場をなくす荷物も出始めるほどだ。関西国際空港では大型の貨物専用機も登場。さらに今後はワクチンなど医薬品の輸送増も見込まれており、航空貨物ビジネスの好機をうまく捉えられるかが、関空の浮上のためのカギにもなりそうだ。  (牛島要平)

スペースがない

 「航空機の貨物スペースの確保が難しく、取り合いになっている。日程や料金の面でお客さんの希望に応え切れない」

 国際貨物の航空便を手配する運送業者の広報担当者はそう悲鳴を上げる。

 「輸送料金も全体的に高くなっている。日程をずらすなどして対応しているが、1時間ごとに(運航などの)状況が変わり、キャリア(航空会社)からは『無理です』と断られることもある」という。

関西国際空港に到着したルフトハンザ・カーゴB777Fの初便=10月28日(ルフトハンザ・カーゴ提供)
関西国際空港に到着したルフトハンザ・カーゴB777Fの初便=10月28日(ルフトハンザ・カーゴ提供)
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 実は貨物スペースが不足しているのは、貨物の取扱量が増えているからではない。関空での貨物の総取扱量は米中貿易摩擦などを受けて平成30年から減り始め、昨年からはおおむね前年比10~20%減の状況が続いている。

 にもかかわらず需要超過になっているのは、座席の床下に貨物を収納することで、全世界の貨物輸送の約50%を引き受けてきた旅客便が新型コロナで大きく減ったのが理由だ。

大型機を投入

 関空でコロナ前の昨年12月に1万2299回あった旅客便の発着回数は、今年9月には404回(速報値)まで減少。一方、貨物便は今年4月以降は毎月2千回前後で推移しているものの、旅客便が減った分を補えてはいない。関係者によると、貨物専用機のスペースに対する積載率は90%以上が続いている。

 このため輸送コストが上昇。今月19日に解禁日を迎えるフランス産ワインの新酒「ボージョレ・ヌーボー」を、通常の空輸ではなく鉄道での陸路輸送に切り替える業者も出るほどになっている。

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 こうした中、貨物専用機の大型化に踏み切った航空会社がある。ドイツ・フランクフルトを拠点とする航空会社、ルフトハンザ・カーゴだ。日本国内4空港で就航し、関空では今月から来月上旬まではフランクフルト便を1便増やして週3便(往復)運航する。ANAホールディングス傘下のANAカーゴと提携し、日本と欧州をつなぐ航空貨物事業で30%以上のシェアを持つ。

 「関西と欧州をつなぐ貨物専用機として一番に選んでもらえるパートナーになる」。ルフトハンザ・カーゴのハッソ・シュミット日本支社長は10月27日、記者会見を開いて、意気込みを語った。

 翌日未明、関空に初めて降り立ったのは同社の新型機B777F。貨物室の天井を高くするなどして、最大積載量は従来機より約20トン多い約100トンに。ドアを広く取り、半導体製造装置など背丈の高い貨物の搭載も可能になった。日欧間の飛行ではこれまでロシアでの給油が必要だったが、大型化で直行できるようになったため、輸送時間の大幅短縮にもつながった。同社は運航する貨物専用機を今後、すべて新型機に切り替えていく方針という。

 コロナで世界中が苦しむ今、なぜ大型機か。塩谷(えんや)和浩・西日本地区統括部長は「(経済活動で)人は動かなくても物は動く」と説明する。競合するJALカーゴサービスを傘下に置く日本航空も、全国的な貨物需要の動向について「諸外国の生産活動再開に伴ってお盆明け以降、自動車関連を中心に荷動きが回復基調にあり、前年水準の需要に近づきつつある。これに伴い夏場にやや下落した運賃も再び上昇に転じている」と分析。この先も順調に需要は伸びそうだ。

関空の強み

 ルフトハンザ・カーゴが関空に大型機を投入する理由がもう一つある。市場の規模感だ。

 「強力な市場こそがこの機体の運航にふさわしい。関空はその一つだ」

 シュミット支社長はこう強調する。関空は関西を中心に、中部圏~九州の企業の電子部品や自動車部品などの貨物輸送の中心地を担う。欧州を経由して北米や中南米、アフリカとも貨物の輸出入を行っている。

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 さらに新型コロナの感染防止に向けて、開発が急がれているワクチンの輸送も見込む。関空は高度に温度管理できる医薬品専用倉庫を備えており、9月の輸入額のうち医薬品は品目別でトップを占めて842億円に上った。シュミット支社長は「来年以降はワクチンの輸送需要が増え、(低温での管理など)物流が直面する課題は今までになく大きくなる」と予想した。

 関空は国内では珍しい完全24時間空港のため、深夜でも貨物を受け入れ、未明のうちに目的地に飛ばせる優位性もある。4千メートルの滑走路を備えることも大型機の離着陸を可能にする。

 新型コロナによるピンチをチャンスに変えられるか。今、関空の真価が問われている。

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