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【ビブリオエッセー】いま、この祈りの言葉を 「金子みすゞ童謡集 わたしと小鳥とすずと」矢崎節夫選(JULA出版局)

 「子供が子雀つかまえた。/その子のかあさん笑つてた。/雀のかあさんそれみてた。/お屋根で鳴かずにそれ見てた。」(「雀のかあさん」)

 ベランダにやって来る雀を見ていて、この詩を思い出した。子雀を捕まえた子供の母親は笑って見ているが、母雀はわが子の大事に胸を震わせ、鳴くこともできないでいる。なぜか私は雀のかあさんになり、もう子雀とは会えないだろうと悲しい気持ちになった。

 金子みすゞの詩は折にふれ読み返し、読むたびに考えさせられる。いまは新型コロナ感染予防で家にいる時間が長く、それではと本棚を整理していたらこの童謡集が見つかり、読み直した。いつごろだったか、たぶん最初の金子みすゞブームの頃に買った本だ。

 「海の魚はかわいそう」で始まる「お魚」、大漁で浜はお祭り気分だが海ではいわしのおとむらいとうたった「大漁」、どんな土も役に立つ、要らない土はないとつづった「土」、降り積もる雪の気持ちになって書いた「つもった雪」…。自然界から人間を見つめた詩が多い。人間もこの自然界の一部なのだ。

 人間中心ではなく、立場を変えて見つめ直すと無意識に相手を傷つけていることがあるのではないか。どの詩もじっくりと、重い。

 書名にもなっている有名な「わたしと小鳥とすずと」はこう始まる。

 「わたしが両手をひろげても、/お空はちっともとべないが、/とべる小鳥はわたしのように、/地面をはやくは走れない。」

 生きとし生けるもの、すべての存在に理由があり、価値がある。社会派のようなことは苦手だが、いまはこの詩の最後の1行を世界がかみしめてほしい。みすゞの祈りの言葉を。

 「みんなちがって、みんないい。」

 大阪府寝屋川市 由井和子 82

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