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70の「下り坂」を前に帰ってきました 60、70は働き盛り 鹿間孝一 

 新型コロナウイルスの影響ではないが、夜の街にはご無沙汰で、すっかり朝型人間になってしまった。

 5時過ぎに起床して近所を散歩し、公園でのラジオ体操に参加する。帰って朝食、新聞を読みながら、さて今日は何をしようか-。

 昨年4月末で退職した。「毎日が日曜日」の解放感に浸ったのはつかの間だった。存分に寝坊ができるのに目が覚める。熱中する趣味もなく、いつか読もうと積んでおいた本も開く気がしない。このまま無為な日々を重ねていくのかと焦った。

 「『下り坂』繁盛記」「年をとったら驚いた!」(いずれも新講社)などで軽妙に老後の生き方を指南してくれる嵐山光三郎さんは「楽しみは下り坂にあり」が極意という。

 問題はいつから下り坂かだ。「人生15番勝負」が持論で、5年を大相撲の1日として75歳で15日間。勝ったり負けたりの7勝7敗で千秋楽を迎えると、勝ち越しをかけた大一番になる。つまりは「70の坂」でもうひと頑張りが必要だ。

 内館牧子さんの「終わった人」(講談社)は元銀行マンが主人公である。出世レースから脱落して、子会社へ出向を命じられる。専務で定年を迎えたが、「終わった人」が受け入れられず、ベンチャー企業の社長を引き受けて大きな負債を背負ってしまう。

 「六十代というのは、男女共にまだ生々しい年代である。いまだ『心技体』とも枯れておらず、自信も自負もある。なのに、社会に『お引き取り下さい』と言われるのだ」

 明治の実業家で新一万円札の肖像になる渋沢栄一は「四十、五十は洟(はな)垂れ小僧、六十、七十は働き盛り、九十になって迎えが来たら、百まで待てと追い返せ」と言って91歳の天寿を全うした。

 わが国は100歳以上が初めて8万人を超えた。65歳以上の高齢者は3617万人で、総人口に占める割合は28・7%。今後はさらに高齢化が加速する。

 65歳はまだ老け込む年齢ではない。高齢者と呼ぶのはもっと先でいい。このコラムの仕事をいただいたのは幸甚である。

 夕刊1面「湊町365」(大阪本社発行)の執筆時には読者の皆さんから多くの手紙やメールをいただいた。この場を借りてお礼申し上げます。

 「フムフムと頷(うなず)き、時にはクスッと笑ったり、一緒に怒ったり、胸を熱くしたり…」。再びそんなコラムをお届けできたらと思う。

 【プロフィル】しかま・こういち 昭和26年生まれ。社会部遊軍記者が長く、社会部長、編集長、日本工業新聞社専務などを歴任。特別記者兼論説委員として8年7カ月にわたって夕刊1面コラム「湊町365」(産経ニュースでは「浪速風」で掲載)を執筆した。

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