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月収100万円の新ビジネス ラジオスタイルの可能性

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【Radioの時代】

 ラジオの魅力の一つに、語り手と聴き手の間に生まれる親密さがある。人の声を聴きながら想像力を働かせる、という個人的な体験が可能なメディアだ。そんなラジオの特色を生かして新たなビジネスを生み出そうという取り組みが、ネットを舞台に始まっている。その試みは、既存のラジオ局にとっても大きなヒントになる。(粂博之)

少ない制約にやりやすさ 

 「あなたのお耳の地元の連れ、ヒコロヒーでーす」

 今年8月、若手芸人らが出演する“ラジオ”の新番組が始まった。動画投稿サイト「YouTube(ユーチューブ)」で配信するYouTubeラジオ局「PILOT(パイロット)」だ。関西弁で連れ(友達)に話しかけるような雰囲気で、番組1本あたり10~15分程度。出演者の動画はないが、話し言葉そのままの字幕が流れる。

 フリーのラジオディレクター、越崎恭平さん(33)や放送作家の白武ときおさん(29)らが中心となって立ち上げた。

 「個人的な小さな体験でも言っていいのがラジオ番組の魅力。受け手により深く突き刺さるコンテンツだと思う。その点でユーチューブはラジオに似ている」と白武さんは言う。

 番組制作は、ネット上の会費制(月千円)のコミュニティーサービス「オンラインサロン」が担う。ラジオ好きの学生や会社員、地方ラジオ局のスタッフなど300人以上が集まり、出演者の組み合わせ、テーマなどアイデアを出し合い、編集作業も分担する。

 番組制作と並ぶ、当面の課題は「お金が回る仕組み作り」。制作費は、今のところ主にオンラインサロンの会費収入でまかなっているが、イベント開催やグッズの販売、チケット制の公開収録などにも取り組んで稼ぐ。

 やるべきことは多いものの、既存のラジオよりも「制約が少なく自由がききやすい」と越崎さん。ファンの理想を実現するため「いろいろ試しながら、何か新しいものが見えてくればいいと思う」。ラジオ番組の持つ魅力とネットメディアの機動力を併せ持った新しい表現を目指す。

誰もがパーソナリティ

 今、どんなラジオ番組が求められているのか。ラジオ局や新聞社などのメディア企業から個人まで幅広く音声番組をネット配信する「Voicy(ボイシー、東京都)」にそのヒントがある。

 同社は平成28年設立。仕事や子育て、人付き合い、資産形成などさまざまなテーマで現在400チャンネル以上の番組を提供している。獲得したリスナー数は明らかにしていないが「年4倍のペース」で増加しているという。

 話し手であるパーソナリティーの人気ランキング上位には、芸人のキングコング西野亮廣さん、脳科学者の茂木健一郎さんら有名人にまじって、仕事と子育てを両立させるワーキングママ、共働きでキャリアアップを目指す若い夫婦も名を連ねる。

 番組は1本5~10分程度だが、人の話し声には抑揚があり「文字データよりも実は感じ取れる情報量が豊富」と、同社代表取締役最高経営責任者(CEO)、緒方憲太郎さん(40)は指摘。誤解や行き違いが生じにくく、いわゆる「炎上」もみられないという。

新たな鉱脈に

 人気番組ともなると、頻繁に聴く人をそれぞれ1万~10万人抱える。中には月100万円程度の広告料収入を得るパーソナリティーも。今年9月からは有料のプレミアム放送もスタートし、ビジネスとしての基盤はさらに強化された。

 ただ、多くのパーソナリティーは収益を目的にしていない。ブログやSNS(会員制交流サイト)のように、面白いと思うこと、だれかの役に立ちそうなことを「発信したい」だけ。週100~200人の出演申し込みがあり、同社で何を語れるのかを審査し、実際に番組制作に至るのはこのうち1人か2人程度だが、着実にチャンネル数とリスナー、パーソナリティーを増やしている。

 ラジオの経営環境は年々厳しさを増している。ある在京の民放関係者は「確実にスポンサーがつく見込みがなければ番組はできない時代だ」と打ち明けるが、リスナーと発信者、双方で作るコミュニティーにも目を向ければ、新たな鉱脈が見つかるかもしれない。

ラジオの新しい姿

 50種類ほどのラジオ受信機が並ぶヨドバシカメラマルチメディア梅田(大阪市北区)。担当者は「災害があったときや台風が近づいているときは売り上げが伸びる」と話す。

 ラジオは災害時の第一情報提供者として信頼が厚い。平成30年に日本民間放送連盟が実施した調査によると、「避難時に役に立った情報源」(複数回答)でラジオは最多の62・3%。携帯電話・スマートフォンの通話(54・3%)やテレビ(34・4%)を上回る。

 しかし大規模災害のあった年以外では、ラジオ受信機の売り上げは低迷が続く。電子技術産業協会(JEITA)によると、12年に269万台だった国内出荷台数は令和元年には117万台となった。

 そんな中、民放連はスマホに着目。ラジオ番組のネット配信、radiko(ラジコ)が聴けるアプリと、ラジオ受信機能を搭載した「ラジスマ」を企画した。31年2月に京セラが第1号を出している。一方、パナソニックは今年8月、スマホなどと無線接続するスピーカーとしても使えるラジオを発売。同社は「ラジコなどの認知度が高まれば、スマホなどよりも高音質な受信機のニーズが出てくる」と見込む。ラジオの姿は変わりつつある。

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