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【勇者の物語~「虎番疾風録」番外編~田所龍一】(70)初めての巨人 情報に踊らされ第1戦落とす

左からご存じ巨人の長嶋、金田、王=西宮球場
左からご存じ巨人の長嶋、金田、王=西宮球場

 さぁ、日本シリーズ、相手は巨人だ。戦う前、西本幸雄監督はこう言って勇者たちを鼓舞した。

 「巨人は日本シリーズの経験者。ゆえに巨人は、どうしても勝たねば-というっ〝十字架〟を背負っている。それに比べるとウチはノビノビとやれる」

 だが、現実は大きく違った。

 10月21日、秋晴れの西宮球場。3万5千人の大観衆。目の前でプレーする憧れの巨人の選手たちを見ただけで、勇者たちは舞い上がった。

 「自分が硬くなっているのすら分からなかった。あぁ、オレと同じ背番号をつけた長嶋さんがいる。一塁に出れば王さんがいる。気づいたらもう負けていた」

 4番の長池徳二にとって長嶋茂雄は六大学時代からの〝憧れの人〟。グラウンドでの一挙一動に見とれたという。そして走者で一塁に立ったとき、なんと王貞治に「打席での心構えは?」と質問したというから、完全にファン目線だ。

 案の定、試合は長嶋が3安打3打点。投げては金田正一が完投。巨人があっさり先勝した。

◇第1戦 10月21日 西宮球場

巨人 002 002 030=7

阪急 000 010 101=3

【勝】金田1勝 【敗】米田1敗 

【本】スペンサー①(金田)

 0-0で迎えた三回、巨人は2死から柴田が右翼線二塁打。土井が死球。王も粘って四球。満塁で長嶋を迎えた。マウンドの米田は過去、長嶋と8度対戦しノーヒットに抑え、この試合の第1打席でも三ゴロに打ち取っていた。

 0-2からの3球目、外角へのスライダーを長嶋は覆いかぶさるように二塁左を抜く先制の中前タイムリー。この後のコメントがおもしろい。

米田「完全に外角へヤマを張られた。なんでも、二塁走者の土井がサインを出しとったらしい」

土井「とんでもない。たとえ出しても長嶋さんは見ないですよ。いつもの動物的カンで飛ばしたんですよ」

長嶋「昔の米田はポンポン投げ込んできたイメージがあったのに、きょうは変化球が多かった。どうしたんだろう」

 多くの巨人のデータが勇者の耳に入っていたのだろう。情報に踊らされている。長嶋の3安打3打点はまさに警戒のし過ぎといえた。

 若さゆえの敗戦。平常心を失った第1戦だった。

(敬称略)

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