【紀伊半島豪雨9年】「復興を記憶にとどめる場に」土砂崩れ跡地に600本植樹
平成23年9月の紀伊半島豪雨から9年。大規模な土砂崩れが起き、5人が犠牲になった和歌山県田辺市伏菟野(ふどの)地区では、住民たちが豪雨の3年後から土砂崩れ跡地にサクラとモミジを植え始め、今年作業がほぼ終了。木々は計約600本にまで増えた。元区長の谷口順一さん(71)は「災害から復興したことを記憶にとどめる場所にし、将来は公園にしたい」と夢を語る。(張英壽)
県や市によると、地区では23年9月4日午前1時前に土砂崩れが発生。岩盤ごと崩れる「深層崩壊」が起き、長さ約210メートル、幅約130メートルの規模で崩れた。複数の住宅が土砂に巻き込まれ、5人が死亡した。
当時区長だった谷口さんは「木とともに地面が流れていった。その光景は忘れられない」と話す。避難所では住民の人数を確認し、濡れた服の代わりとなる衣類を提供。「当時はとにかく必死だった」と振り返る。
土砂崩れ跡地は、県が24年2月から復旧工事を開始。山肌にコンクリートが吹き付けられ、27年3月に完了した。この年の4月には現場近くに「災害復興記念碑」が除幕された。
復旧工事で山肌が日々整地されていくのを見ていた谷口さんは「復興した証として何かできないか」と考えるようになった。
「復興した土砂崩れ跡地を人々が憩える場にできないか。サクラとモミジを植えれば、春は花見、秋はモミジ狩りを楽しめる。そうすれば、災害が起きたことと復興したことを住民の記憶にとどめておける」