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「長浜曳山まつり」試される地域との共生 コロナ禍機に改革

 400年以上の歴史を持つ滋賀県長浜市の「長浜曳山まつり」は、曳山の舞台で小学生が熱演する子供歌舞伎が毎年、多くの観光客を魅了している。毎年4月に開催されており、新型コロナウイルスの影響で秋への延期も模索したが、子供たちの安全確保のために、やむなく中止を決定した。13基の曳山をそれぞれ管理運営する「山組」は自治会とも重なる地域コミュニティー。子供から高齢者まで、世代を超えて地域を支える原動力になってきた曳山への誇りと結束力の強さがコロナ禍を機に試されている。  (出雲一郎、清水更沙)

中止の重み

 「新型コロナの感染第2波への警戒などもある。中止の重みを痛感している」

 祭りを統括する「長浜曳山祭総当番」の吉田豊委員長(68)は6月末、長浜市役所で開いた記者会見で絞り出すような声で語った。いったんは秋開催の検討を発表していたが、「曳山の舞台上で披露される子供歌舞伎に参加する子供たちの安全が確保できない」と苦渋の決断だった。

 国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産にも登録されている長浜曳山まつりの始まりは、豊臣秀吉が長浜城主を務めた安土桃山時代にさかのぼる。中止は71年ぶりで、今年は令和に入って初めてだっただけに、関係者らの落胆は大きい。

住民を結ぶ

 各町内(山組)には子供役者や若衆、中老など子供から高齢者までそれぞれに役割があり、伝統を引き継いできた。メインイベントは曳山の舞台で行われる「子供歌舞伎」。12基の曳山が毎年、4基(出番山)ずつ順繰りで歌舞伎公演を行う。子供役者は祭りの“華”で、子供たちのあこがれの的として親子代々出演している家も珍しくない。

 ただ、近年は少子高齢化が一段と進み、子供役者の確保に苦心する状況が続いている。祭りが来年に延期され、今年の公演がそのまま持ち越されることが決まった「青海山」で子供歌舞伎の指導を担当する中嶋利直さん(43)は「中止の影響は子供役者にとって大きすぎる」と話す。3年ごとに出番山になるため、組では本番の3年前から子供役者候補に見当をつける。「子供の成長は著しく次に体格と歌舞伎の役柄とが合うかどうか分からない。出番に備えていた幼い子供役者の精神的な動揺も心配だ」とこぼす。

新たな試練に挑戦

 今年は子供歌舞伎を奉納する長浜八幡宮の御鎮座950年にあたる節目の年でもあり、祭りの改革に意気込んでいた矢先の中止決定だった。コロナ禍だけではない。少子高齢化や過疎化などに伴う財政難など、祭りを取り巻く環境は厳しさを増すばかり。吉田委員長は「これを機会に新たな試練に挑戦するしかない」と気持ちを切り替えている。

 来年以降の開催に向けて総当番がまとめた改革案には、新型コロナとの共存を踏まえ、曳山の市街地巡行の中止や、子供歌舞伎のインターネット配信、4山組による子供歌舞伎を一つの曳山上で共演すること、サーモグラフィー(自動体温測定器)による観光客の制限などを盛り込んだ。吉田委員長は「伝統と誇りを重んじる山組が簡単に同意するかどうかわからない」と懸念するものの、「祭りを維持、存続させるにはこれしかない」と言い切る。

 さらに祭りは街の活性化とも切っても切れない関係にある。長浜市の観光客数は中心市街地だけで年間約400万人。曳山を展示する曳山博物館は観光客への吸引力の柱の一つで、祭りと市街地のにぎわいは「持ちつ持たれつ」の両輪だ。吉田委員長は「新型コロナと共存できる観光地にならないと街も祭りも生き残れない」と力を込める。

 試練を乗り越え、祭りの歴史と伝統を維持し、にぎわいを取り戻せるか。住民の団結力が問われている。

 長浜曳山まつりのほかにも、湖国を彩るさまざまな曳山巡行が新型コロナウイルスの影響を受けた。大津祭(大津市)や水口曳山祭(甲賀市)、日野祭(日野町)、大溝祭(高島市)なども中止が決まっている。

 約400年の歴史を持つ大津祭は囃子の音に合わせ、粽を沿道に捲く曳山巡行が32年ぶりの中止となった。「祭りは生活の一部だ。本当に残念でならない」とNPO法人「大津祭曳山連盟」の元田栄三理事長は話す。子供のころから「囃子方」として祭りに参加してきただけに「地域の人がどれだけ祭りを楽しみにしていたかをよく知っている」と残念がる。

 屋根の上に人形などを豪華に飾り付けた曳山が特徴の水口神社(甲賀市)の大祭「水口曳山祭」も4月に予定していた曳山巡行が中止に。石王尚治宮司は「収束後は目いっぱい、祭りにエネルギーをぶつけたい」と話している。

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