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【一聞百見】ユーチューブで「癒やしの法話」 作家・僧侶、家田荘子さんの思い

 ノンフィクションは事実だからこそ意味がある。取材をしてみないとモノになるかどうかわからない。「小説だと読者が期待するような結末やセリフがあってストンと腑に落ちるんですが、ノンフィクションではそうはいかない。最後に腑に落ちない言葉が出てくることも多いんです。バラバラ殺人の犯人に面会にいってその時のことを聞いたら、ケラケラと笑ったんです。もしその笑いに苦しみがあって絞り出すような笑い方だったら人に伝えたいと思ったけれど…。軽くて罪の意識が感じられない笑いだった。ああ、これは書けないと思いました」

■歩くお寺になって人の中へ

 作家であり僧侶でもある家田さん。平成11年に得度し、19年には高野山大学(和歌山県高野町)で伝法灌頂(かんじょう)を受け僧侶になった。高野山は弘法大師空海が約1200年前に開いた真言密教の修行道場だ。家田さんは厳しい講習と試験を経て、その教えを伝える高野山本山布教師の資格を得る。以来、高野山奥の院や総本山金剛峯寺で不定期に法話を行っている。一方で毎月、山行や水(すい)行、歩き遍路を欠かさない。

左に下げた小さな三つ編みは「不動明王様と同じ弁髪をしたくて」と話す家田荘子さん=大阪市浪速区(薩摩嘉克撮影)
左に下げた小さな三つ編みは「不動明王様と同じ弁髪をしたくて」と話す家田荘子さん=大阪市浪速区(薩摩嘉克撮影)
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 「私にとってお行をするなというのが一番困ること、苦しいことなんです」という。その行とは。「水行には滝行や海行などがあります。自宅で水をかぶる禊(みそぎ)行は毎日やっていますし、海行は毎月、日本海側のある荒海でさせていただいています。深夜一人で海に入り行をする。私にとっては自然と一体化する貴重な時間です」。行は厳寒の時期も台風でも、暗い闇夜の中でも。天気予報を見て決めるわけではないため、「新幹線がとまらない限り許されたと思っていきます」。冬のつらさは想像を絶するが「自分を原点に、真っ白に戻してくれる。自然相手ですので慣れることも終わりがくることもありません」とほほ笑む。

 ライフワークになっているのが四国歩き遍路だ。すでに14回と車で2回巡っていて、修行として18回を目標にしている。いずれ問題を抱えた女性たちを受け入れる「ミニ駆け込み寺」を持ちたいと思っているが、「まだ時期ではないと思っています」といまだ修行中だそうだ。「今は私自身が歩くお寺になって皆さんの中に入っていけばいいと。かつてお寺や神社って悩みを聞いたり、トラブルを収めたりする場所だったと思うんですが、今はだんだんと遠くなってしまっています。ですから私から歩いていく。実際にお遍路に行くと、待ってくださる人もいて、次の札所まで、ご一緒しながらお話を聞くこともあるんですよ」

 新型コロナウイルスで葬式などが簡略化されたり変化したりしている現状にも「仕方がないけれど、やはり昔からあるものは続けていてもらいたい」と憂う。なぜなら昔から「見えないものが見える」からだ。「吉原(かつて遊郭があった地)にご縁があって、供養をさせていただくようになって21年目になります」。大正12年9月1日、関東大震災で吉原も大火に包まれ大勢の遊女らが亡くなった。家田さんは毎月、供養のため通う。「亡くなっても苦しんでいる人がいます。お経、つまり栄養を与えて楽になっていただく。お経もうまい下手ではなく心です。早く皆に成仏してもらいたい一方で、全員成仏してしまうと私の役目がなくなっちゃう。一人くらい残しておきたいな、なんて考えてしまいます」と笑う。そんな自分だからこそ、コロナ後が心配だという。「やはりお墓は大切です。亡くなった方の門出だと思ってちゃんとお葬式もやってもらいたい。どんなお墓でもかまいません。形ではなく心が大事です」

 20代のころ道に迷っていた。京都に来ると訪ねていた易者の川井楚山さんに「一生仕事をするタイプだけど、その代わり孤独な人生を歩むね」と言われたそうだ。作家になってその意味がわかった。孤独でなければ、満たされすぎては人の大切な人生を書くことはできない。信仰に出合い、行を得た今、家田さんは穏やかに全てを受け入れ歩を進めているように見える。

 「与えられたお役目がある」と信じて。

【プロフィル】いえだ・しょうこ 愛知県出身。日本大学芸術学部卒。高野山大学大学院修士課程修了。女優など10以上の職を経た後、作家に。平成3年「私を抱いてそしてキスして-エイズ患者と過ごした一年の壮絶記録」で第22回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。19年高野山大学で伝法灌頂(かんじょう)を受け僧侶に。高野山本山布教師。山行、水行、歩き遍路を欠かさず高野山などで法話も。著書に「極道の妻たち」「女性のための般若心経」「孤独という名の生き方」など。8月に新刊「別れる勇気 男と女のいい関係のカタチ」を刊行予定。ユーチューブでは「家田荘子 ココロの法話」を配信中。

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