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【ビブリオエッセー】リラックスと卵焼き 「つるかめ助産院」小川糸(集英社文庫)

 この本を読んだのは、二度目。最初に手に取ったのは助産師になりたての頃だった。そして二度目の今回は、二人目を妊娠中の今である。

 主人公は、行方をくらました夫の子を身ごもり、離島の助産院で妊娠期間を過ごすことになった妊婦、小野寺まりあ。彼女を見守る「つるかめ助産院」の助産師、鶴田亀子先生をはじめ島の人たちとの交流を通して自分と人生に向き合い、出産にのぞむ女性の話である。

 二度目の今回の方がじんわり心に響くものがあった。私が妊婦だからではなく、助産師として経験を積んだからかもしれない。亀子先生のセリフ、「妊婦さんは、バカになるのが一番」「頭の中をすっからかんにして」「都会の人達は、がんばってがんばってリラックスするんだから、ほんと、笑っちゃうわよね!」。同じようなことをつい最近、私の助産師さんにも言われたことを思い出した。

 リラックス、これがなかなかどうして難しい。誤解を恐れずに言うと私も、そして確かに現場でも賢すぎてカチコチになりがちな女性が多いのだ。妊婦のみなさん、まずはスマホや情報から距離を置いてみませんか。

 また、小川さんの小説に出てくるご飯は本当においしそうだ。なるほどなあと思ったのは、「卵焼きっていうのは、子供にとって最初に触れるお袋の味だよ」「卵焼き一つで、その人の性格までわかっちゃうんだから」というセリフ。もうこれだけで卵焼きが作りたくなる。

 まりあが臨月に食べにいく「妊婦ラーメン」も一度食べてみたい。食べることは育むこと。当たり前のことかもしれないが、今回気づかされた新たな発見だった。

兵庫県芦屋市 儀間沙耶香40

【ビブリオ・エッセー募集要項】本に関するエッセーを募集しています。応募作品のなかから、産経新聞スタッフが選定し、月~土曜日の夕刊1面に掲載しています。どうか「あなたの一冊」を教えてください。

 投稿はペンネーム可。600字程度で住所、氏名、年齢と電話番号を明記し、〒556-8661産経新聞「ビブリオエッセー」事務局まで。メールはbiblio@sankei.co.jp。題材となる本は流通している書籍に限り、絵本、漫画も含みます。採用の方のみ連絡、原稿は返却しません。二重投稿はお断りします。

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