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【ビブリオエッセー】馬頭琴の音色に再び涙 「スーホの白い馬」大塚勇三・再話 赤羽末吉・画(福音館書店)

 モンゴルには楽器の一番上が馬の頭の形をした馬頭琴という楽器がある。なぜこんな楽器ができたのか、そのなりたちがモンゴル民話を題材にしたこの絵本で語られている。私は小学校の教師だった頃、子供たちとこの絵本を読み、みんなで感想を語り合ったことがある。赤羽末吉の絵が印象深く、久しぶりに再読した。

 スーホはモンゴルの草原におばあさんと暮らす貧しい羊飼いの少年。ある日、道端に倒れていた小さな白い子馬を見つけ、連れて帰り、心をこめて世話をした。その甲斐あって子馬はすくすくと育ち、りっぱな白馬に。ある年の春、殿さまが競馬大会を開く。一等になった者を娘と結婚させるとのおふれを出した。

 出場したスーホはみごと一等。しかし殿さまは貧しいスーホを見て約束を破り、銀貨三枚で白馬を取り上げてしまった。「馬を、売りにきたのではありません」。強く言い返すスーホを家来たちが打ちのめす。その後、殿さまは白馬を見せびらかそうと宴を開いた。またがったそのとき、白馬は殿さまを振り落として走り出す。家来たちの放つ矢が次々と背中に。それでも傷だらけでスーホのもとへ駆け戻った。

 力尽き息を引き取る白馬。悲しみにくれるスーホの夢の中へ白馬が現れた。私の体を使って楽器を作ってください、そうすればいつまでもあなたのそばにいられます…。

 これが馬頭琴。スーホは口惜しさとともに、白馬と草原を駆け回った楽しい日々を思い出しながら馬頭琴を奏でた。その音色は美しく人々の心に響いていく。

 民話には権力への憤りと耐える民衆の悲しみが凝縮する。読後、美しい馬頭琴の音色に耳を澄ませ、再び涙した。今も大切な愛読書だ。

 兵庫県伊丹市 中西博子83

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