PR

産経WEST 産経WEST

身近に感じる展示、どう守るか 人気水族館ニフレルの葛藤

「およぎにふれる」のサカサクラゲの水槽。映る影で泳ぎの動きを楽しめる=大阪府吹田市(前川純一郎撮影)
「およぎにふれる」のサカサクラゲの水槽。映る影で泳ぎの動きを楽しめる=大阪府吹田市(前川純一郎撮影)
その他の写真を見る(1/2枚)

 大阪府吹田市の万博記念公園内にある水族館「NIFREL(ニフレル)」は、今年11月で開業5周年を迎える。生き物それぞれの個性的な姿、技に焦点をあてた展示が好評で、来館者数は延べ500万人を超える人気施設となった。スタッフが気軽に来館者の質問に答えたり、餌やりを見せたりする工夫で、生き物を間近に感じられるのも特徴だ。ただ、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、当面、従来の演出が難しい状況に。それでも生き物たちの姿を伝えようと新たな挑戦を重ねていく。  (石川有紀)

小さな水槽でこそ

 大型複合施設「エキスポシティ」内に開業したニフレルは、世界最大級の水族館、海遊館(大阪市港区)が運営している。

 太平洋の海を巨大な水槽で再現した海遊館に対して、ニフレルは海遊館の3分の1以下、延べ床面積約7200平方メートルとコンパクトな施設だ。

 「大型水槽の中では気付いてもらえない、小さな生き物の個性や魅力を小さな水槽で伝えよう」。海遊館でジンベエザメの飼育を長年担当していたニフレルの小畑(おばた)洋館長(53)は、スペースの制約を逆手にとって生き物を小型水槽で来館者の間近で見せている。

 「生き物はそれぞれに美しく個性的で、独特の能力を備えている。そう気付けば、人も自分や他人の違いを肯定的に受け入れられるはず」

アートのような空間

 生き物の多様性を伝えるために「動物園と水族館、美術館の枠を超えた『生きているミュージアム』をめざしてきた」と小畑館長。館内を8つの展示ゾーンに分け、それぞれ「いろにふれる」「みずべにふれる」「うごきにふれる」などのテーマを持たせている。

 今年2月に誕生した「およぎにふれる」のゾーンでは、魚やクラゲ、カメなどの泳ぎ方の違いに注目してもらおうと、水槽をLEDライトで照らして浮かび上がる生き物の影の動きを強調した。

 また、「わざにふれる」のゾーンでは、砂に隠れたり、まわりと同じ色に変化したりする生き物たちの“技”を間近に見られる工夫を施す。東南アジアのマングローブ域に生息し、水面より上にある葉や枝に止まった昆虫を捕まえるため、口から水を飛ばして打ち落とす技を持つテッポウウオ。その技を再現するため、マングローブ林を模したアートのような装置に練り餌をつけ、打ち落とさせる仕掛けもある。

 館内の通路に立ち、来館者の質問に気軽に答えてくれるのが、生き物に関する知識の豊富な「キュレーター」だ。ニフレルでは生き物の世話をする飼育員や獣医師を、キュレーターと呼ぶ。美術館や博物館で展示の企画や調査研究にあたる専門職を指す言葉だが、ここでは「人と生きものをつなぐ」案内人だ。

「今日を配信」

 「人見知りなので、お客さまに話しかけるのに初めは勇気がいりました」と話すのは、キュレーターの一人、恩田紀代子さん(35)。「あれは何だろう」などと話す家族連れの会話に加わって説明することもあれば、動物が来場者に近付いたときには「動く木になった気分で、なでたりせず自然な姿を見守って」と声をかけるなど、状況に応じた案内を心がけてきたという。

 新型コロナの影響で、ニフレルは約3カ月休館した。休館中もキュレーターたちは、館内の人気者、ミニカバやカピバラ、背中をかくエビの様子などを伝えるユーチューブ動画「きょうのニフレル」を毎日配信して、ファンと生き物たちをつないだ。その一方で、配信するためのネタ探しや、撮影は「生き物にじっくり向き合う時間にもなった」という。

 6月1日の再開にあたり、感染防止のため当面、当日券販売は取りやめ、インターネット上で入館日時を指定した券を事前販売する仕組みにした。1日あたりの入館者数も従来の1割程度に絞っている。

 来館者の人気を集める、キュレーターによる餌やりの解説は、人の密集を招くため、当面中止だ。「これまでの積極的な解説ができないもどかしさを感じる」(恩田さん)というが、生き物と来館者をどうつないでいくか思案を続けている。新しく、見どころを「キュレーターのつぶやき」として黒板に手書きして伝える手法も始めた。開館5周年を迎えるニフレルでは、挑戦が続いている。

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ