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【ビブリオエッセー】普通の人々の暮らしが見たい 「女ひとり、イスラム旅」常見藤代(朝日文庫)

 そうそう、こんな本を待っていた。イスラム(教)の国々の恋愛や結婚、ホスピタリティ。難解な専門用語が出てくるしかつめらしい学術文献ではない。『女ひとり、イスラム旅』は、かの地の、普通の人々の暮らしをかいま見ることができる。

 中東と聞くだけで暴動やテロなど怖いイメージがまず思い浮ぶ人も多いのではないか。この本の著者と同様、私もその一人だったが、本当にそうだろうかとボタンの掛け違いのような違和感をずっと拭えずにいた。

 チュニジアからパキスタンまで、イスラム教徒の多い7カ国を「女ひとり」で旅した著者は「実際にはかなり違っていた」と現実とのギャップに気づく。初対面の人から家に泊まるようにと気さくに声をかけられたり、モロッコではハマムという大浴場で現地の女性たちにならい一心不乱に垢擦りをしたり、嫁入り道具の一つがセクシー下着だったり、アルコールは原則禁止のはずが意外とそうでもなかったり…。

 とりわけ興味深かったのが女性たちの装いである。イスラム教徒の女性が全身黒ずくめなのは必ずしも抑圧の象徴ではなく、「私のこの高貴な美しさをタダで見せてなるものか」というプライドゆえ、らしい。なるほど。しかしシリアの章では気持ちがずしんと重くなった。そこには内戦前の平穏な人々の生活があった。

 実は、この本に触発され、私はこの本をお供にイスタンブールならぬオマーンまで飛んでしまったのだ。頭に被り物をして、まさに「女ひとり、イスラム旅」。大変なこともあったが人々は温かかった。「なぜオマーン?」と聞かれたが深い理由はない。コロナ禍がおさまれば、またイスラムの国を旅してみたい。

 横浜市南区 ゆかり 40

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