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【ビブリオエッセー】ホラ男爵の大アマゾン釣り紀行 「オーパ!」開高健(集英社文庫)

 先日、何げなく夜のニュース番組を見ていたら、見覚えのある本の表紙が現れた。それが『オーパ!』で、自粛期間中に行われた紀行文学ランキングの第1位に選ばれていて、これには驚いた。

 というのも、『オーパ!』は著者の南米アマゾンを舞台にした釣り紀行だが、一部の釣りマニアしか読まないと思い込んでいたからだ。ブラジルでは驚いたときに「オーパ!」と叫ぶ。そのスケールに圧倒され、重厚で格調高く、それでいてユーモアとウイットと大ボラをちりばめた独特の語り口は絶品。すっかり開高ワールドに引き込まれ、こちらも「オーパ!」と叫んでいた。黄金色の魚ドラドをはじめとする怪魚たち…。そして、高橋●(=日の下に舛)カメラマンによる写真の迫力が魅力の写真集でもあった。

 20代後半のころ、釣り好きの職場の先輩から「この本、面白いから読んでみぃ」と薦められたのが『オーパ!』だった。著者は洋酒会社の元コピーライター。私も宣伝関係の仕事をしていて、また釣りが好きということもあり、勝手に親近感を抱いていた。

 しかし私は仕事と子供の世話で超多忙。著者の2カ月にも及ぶ釣り紀行は大変羨ましかったが、夢のまた夢。通勤電車の中で開高ワールドに浸るのが大きな楽しみだった。

 その後、読み返したのは、還暦前に受けた胃ガン手術のリハビリ期間中だった。釣り好きの親友がガンで入院した時もお見舞いにこの本を持っていった。不幸にして彼は帰らぬ人となったが命日には仲間が集まっている。「永遠に、幸わせになりたかったら釣りを覚えなさい」。この本にはこんな古諺が引用されていた。彼も今はゆっくり釣り糸を垂れていることだろう。

兵庫県尼崎市、北島康弘 73     

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