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【ビブリオエッセー】「軒反り」の美に魅了されて 「宮大工 千年の知恵-語りつぎだい、日本の心と技と美しさ」松浦昭次(祥伝社黄金文庫)

 私は寺社めぐりが好きである。小さい頃から日本の歴史を知りたいという思いが強く、その時代の建物、古い木造建築に興味を持つようになった。

 本書は日本の古い社寺建築、「木の文化」の美しさとその秘密が余すところなく描かれている。著者の松浦氏はあの西岡常一氏に次いで「技術者の人間国宝」に認定された宮大工だ。松浦氏はいう、社寺建築の美の根源は第一に屋根の「軒反り」の姿だと。緩やかに反っていく軒先は「昔の大工の知恵と技術が一番詰まっている」という一文は大いに共感できた。日本人の繊細な手業の結晶がここにある。

 私は大阪に住んでいるので、少し足を伸ばすと多くの素晴らしい日本の古建築に出合い、日本の美を生み出してきた昔の宮大工の知恵を目の当たりにすることができる。

 本書を読むと、木の文化を支えた大工さんの三種の神器…サシガネ、墨壺、チョウナがいかに優れた道具であるかに気づかされる。木のしなやかさ、肌合い、香り…それぞれの性質を生かして造られた日本の古建築。木と木の組み合わせ、あるいは微妙にバランスを崩したり、湿気を逃がす柱と礎石の工夫があったり…。著者はとりわけ中世建築と軒反りに着目し、軒反りがいかに重要かを再三書いている。その美を作り出した垂木の工夫にも感心した。

 古代建築の代表ともいえる法隆寺の堂塔は千三百年以上も生き続け、今も訪れる人を魅了する。一方、中世建築の日本的美は瀬戸内地域に多く点在しており、コロナ禍が一段落したら、また由緒ある建物をめぐりたい。宮大工の知恵と技に思いを馳せると心が和らぐ。大阪府富田林市 増谷俊一 79

 【ビブリオ・エッセー募集要項】本に関するエッセーを募集しています。応募作品のなかから、産経新聞スタッフが選定し、月~土曜日の夕刊1面に掲載しています。どうか「あなたの一冊」を教えてください。

 投稿はペンネーム可。600字程度で住所、氏名、年齢と電話番号を明記し、〒556-8661産経新聞「ビブリオエッセー」事務局まで。メールはbiblio@sankei.co.jp。題材となる本は流通している書籍に限り、絵本、漫画も含みます。採用の方のみ連絡、原稿は返却しません。二重投稿はお断りします。

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