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夏用も登場 日本手ぬぐいのマスクに込められた思い 

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、大阪発祥の染色技法「注染」を受け継ぐ染色会社「ナカニ」(大阪府堺市)が、日本手ぬぐいを使ったマスクを提案している。同社の手ぬぐいブランド「にじゆら」で、手作業で染め上げた、にじみやぼかしも生かした絵柄のマスクを販売するほか、家庭で簡単にできる手持ちの手ぬぐいを使ったマスクの作り方も紹介している。薄手の夏用マスクも発売しており「さらに改良を重ねていく」という。  (北村博子)

売り上げが急増

 にじゆらの、注染で染めた手ぬぐい地を使ったマスクが1日100枚、店頭やインターネット販売で飛ぶように売れ出したのは今年2月下旬頃からだった。普段は1日平均3枚ほどが売れる商品が急激に売り上げを伸ばした。

にじゆらのマスクシリーズ。左上から右回りに「Reカタチ」、以前から販売している「注染手ぬぐいマスク」(リバーシブル)、和ざらしのマスク、新作の夏用マスク
にじゆらのマスクシリーズ。左上から右回りに「Reカタチ」、以前から販売している「注染手ぬぐいマスク」(リバーシブル)、和ざらしのマスク、新作の夏用マスク
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 当時、不織布マスクが品薄になり始めていた。注文は増える一方で、なるべく早く社会に届けようと、まずは染色前の白のさらし木綿「和ざらし」製の発売を始めた。1枚440円。原材料や縫製代を考えると「もうけは度外視だった」と中尾雄二社長(62)は打ち明ける。「縫製体制も整っておらず、やっとのことで1日150枚作っても即完売という状況が3週間もつづいた」

 これに続いて「マスク不足の一助になれば」と、各家庭にある手ぬぐいを使ってできる「縫わずにできる手ぬぐいマスクの作り方」の動画を公開したのは3月初旬。布を丁寧にたたんでいくと、簡単にマスクができあがる。これまでに10万回以上視聴されている。

給与はゼロでも

 下請け専門の染色工場を父親から受け継いだ中尾さんは11年前、手ぬぐいを中心とした自社製品を販売する「にじゆら」を立ち上げた。明治時代に大阪で考案された技法「注染」は、重ねた生地に染料を注ぎ、糸まで染める手法で繊細な色合いの表現が可能だ。使うほどになじむ肌ざわりの良さ、手作業だからできるにじみやぼかしも生かしたデザインは現代の暮らしにもマッチして、ブランドは大阪、東京、京都など全国6カ所で店舗を展開するほどに拡大。昨年は過去最高の売り上げを記録した。

そのまま使うだけでなく、必要な部分を切り裂いて使える手ぬぐいの便利さを説明する中尾雄二社長=堺市中区のナカニ
そのまま使うだけでなく、必要な部分を切り裂いて使える手ぬぐいの便利さを説明する中尾雄二社長=堺市中区のナカニ
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 ところが、新型コロナの影響で4月に入ると全店休業に。店舗収入が断たれたため、全体の売り上げの半分が減少。すでに問屋からの注文もストップしており不安に襲われたという。振り返れば1月末から4カ月間、業務をマスク製造にシフトしながら減収をカバーし、役員の給料を返上して耐え忍んだという中尾さん。「この仕事に就いて37年目になるが、こんなに頭をフル回転するのは初めて。自分の給料をゼロにして、なんでこんな一所懸命やらなあかんのって思うけど、誰一人辞めさせたくないんですよね」と力を込める。

 従業員は42人。ブランドが軌道に乗ったことで「仕事があるのが当たり前」という社内の雰囲気に不満を抱くこともあった。しかし今回、休みを返上して配送作業を行ったり、商品のアイデアを考えたりしてくれる彼らに期待が膨らんだ。「悪いことばかりでもない。人が試され、成長できる時期なのかもしれない」。そういって頬を緩める。

失敗は成功のもと

 春先からは、布製マスクの需要がさらに高まったため、色飛びなどで商品化できない手ぬぐいを活用した「Reカタチ」を開発した。マスク用のゴムも手に入りにくくなってきたため、手ぬぐいの端を切り割いてひも代わりに。直線縫いだけで完成するため、縫製の手間も軽減された。

 このほか、手作りマスク用の生地として色無地や、これまでブランドで扱ってこなかったプリント手ぬぐいを販売し、今も商品の種類を増やしている。今月からは、通気性が良い薄手の夏用マスクも発売している。

絵具をひっくり返したような世界が広がるナカニの染色工場=堺市中区
絵具をひっくり返したような世界が広がるナカニの染色工場=堺市中区
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 店舗の営業は再開しているが、新型コロナの影響でイベント中止も相次いでおり、記念品として配られる手ぬぐいの受注を今年は見込めない。決して楽観視できる状態ではないが、「マスク販売を通じて和ざらしや注染の魅力を知ってもらえるチャンス」と捉えようと思っている。実は、格安で販売した白地のマスクは利益が出ず、事業としては失敗だったと思われたが、購入客がその後、注染のマスクや手ぬぐいにも目を向けてくれるようになっている。

 「注染なんかもう終わっている」という外野の声にもくじけず仕事に打ち込んできた。「経営が厳しい時ほどブレそうになるが『誰かのため生きることが自分のためになる』という信念をこれからも持ちつづけたい」と中尾さん。決意を新たにしている。

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