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【ビブリオエッセー】見てから読みたいヴォーリズ 「屋根をかける人」門井慶喜(角川書店)

 読んでから見るか、見てから読むか。ただし本か映画か、の決めゼリフではない。この本を半分ほど読んだころ、その舞台や建築を見たくなり、ドライブがてら近江八幡のヴォーリズ記念館を訪れた。しかし残念、その日は週一度の休館日。コロナ禍以前の話だ。

 主人公は米国人ウィリアム・メレル・ヴォーリズ。学生時代からYMCAの活動に携わり、キリスト教伝道者として明治38年に来日する。メレル24歳、日露戦争終結の年だった。

 横浜港に入港前日に見たフジマウンテン。その船上で「滞在は何年間?」と問われたメレルの第一声は「永住します」。その言葉が彼の覚悟と人生を決めた。赴任地は滋賀県のほぼ真ん中、近江八幡という鄙びた静かな町だ。英語教師として赴任した。伝道は当初、住民には受け入れられなかった。しかし持ち前の明るさと楽観的な人柄で若者たちの人気を得る。各地に未来への種をまき、豊かに実っていく。

 以前から関心が強かった建築設計を数多く手がけたメレル。近江八幡のYMCA会館からその仕事が始まった。また、メンソレータムの輸入販売、国内製造など数々の事業を手がけて、「青い目の近江商人」の異名まで。一(ひとつ)柳(やなぎ)満喜子と結婚して帰化し、一柳米来留(めれる)と改名、名実ともに日本人となった。

 「私たちはいずれ、地球そのものを覆う広大な一枚の屋根をかける人となりましょう」

 キリスト者の熱い思いと妻の熱意から学園や病院などの運営に関わり、社会貢献にも尽力。日本で波乱万丈の83年の幕を閉じる。

 読了した今、どちらが先かは想像力か直観力かの選択だと思った。私はその人の仕事を見てから調べる。直観派だなと改めて気づいた。

 大津市 引原宏二 75

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