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【ビブリオエッセー】「地球号」へ思い重ねて 「11人いる!」萩尾望都(小学館文庫)

 宇宙船にはびこる電導ヅタ、近づく恒星と上昇する船内温度、そして致死の病を引き起こすウイルスの発生、ワクチンはどこに、乗員たちの運命は…。コロナ自粛でこんな場面を思い出し、何十年ぶりに読み返したのは、SF漫画の名作『11人いる!』だった。

 宇宙大学の入試最終テストにさまざまな星々から集まった受験生たち。主人公の少年、タダたちに課せられたのは宇宙船「白号(はくごう)」での集団生活だった。53日間の乗船日数を無事にクリアできたら合格だが、定員10人のはずが「11人」いた。紛れ込んだのはいったい誰か。当初から怪しいトラブルにみまわれる。

 いくつもの窮地が待っていた。ギブアップを意味する非常ボタンを押して助けを呼べば全員失格となるルールで、11人は疑心暗鬼に陥りながらも団結し、難局を乗り越えていく。

 予期せぬ事態が起きた。船内での爆発で航路がずれて熱い恒星に近づいていたのだ。船内の電導ヅタは温度が上昇すると蔓延し、自己防衛のため作り出す結晶体にウイルスが発生した。

 タダの脳裏によみがえる記憶-。この白号には幼い頃、乗船したことがあった。そのときも電導ヅタによるウイルスが発生し、多くの死者を出していた。ワクチンが足りない。タダはこの船で両親を亡くしたことを思い出した。

 地球を一つの大きな宇宙船にたとえれば私たちも今まさに船内でコロナに侵されつつある。急がれる治療薬やワクチンの開発。物語の最後にこのスペースミステリーは、若者たちの未来へ希望を託す。宇宙船「地球号」はコロナ禍の後、どんな新しい未来を描くのか。乗員の一人であることを心がけ、歩みたい。

 奈良市 栗かのこ 59

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