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【ビブリオエッセー】あのゾクゾク感をもう一度 「火車」宮部みゆき(新潮文庫)

 今般の新型コロナ対策で自宅時間が増え、家の本棚にある古い本を読み返している。『火車』が出版されたのはバブル崩壊が叫ばれた1992年。私はその後まもなく、単行本を購入した。

 そもそもこの小説を知るきっかけになったのは、たまたま目にしたフリーペーパーのお便り欄。女性読者の一文だった。「ゾクゾクする展開でページをめくる手が止まらない」「作者は昭和35年生まれ。私と同い年の人が、こんなにすごいものを書くなんて。あぁ、なんという才能!」というようなことが書かれてあった。今でいうところの「ビブリオエッセー」だが、彼女の書評は昭和36年生まれの私にもまっすぐ響き、すぐさま読んでみることにした。

 婚約者の失踪に始まり、多重債務にカード破産、闇金、そして、なりすましと殺人疑惑…。なるほど彼女の書評通りのゾクゾクする展開でページをめくる手が止まらない。刊行から30年近く経ち、消費者金融をめぐる法改正や個人情報の扱いなど、すでに当時とは隔世の感もあるが、いま読み返しても圧倒的な読み応えだ。

 そして、人物たちがそれぞれ魅力的で、まるで生きているかのような筆致。追う刑事に謎の女、その周りのカギを握る人々。彼らの姿は私の頭の中できちんと顔のある人物として登場する。(私の場合、あの役者さんがぴったりだ、と勝手に俳優さんが浮かんできてしまう)

 それまで特に本好きでもなかった私に、この本は読書、特にミステリー小説の面白さを教えてくれた。そして、この本に出会えた、あの時の書評にとても感謝している。

奈良県生駒市 松ノ浜さくら58

     ◇

 【ビブリオ・エッセー募集要項】本に関するエッセーを募集しています。応募作品のなかから、産経新聞スタッフが選定し、月~土曜日の夕刊1面に掲載しています。どうか「あなたの一冊」を教えてください。

 投稿はペンネーム可。600字程度で住所、氏名、年齢と電話番号を明記し、〒556-8661産経新聞「ビブリオエッセー」事務局まで。メールはbiblio@sankei.co.jp。題材となる本は流通している書籍に限り、絵本、漫画も含みます。採用の方のみ連絡、原稿は返却しません。二重投稿はお断りします。

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