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【私と胸高鳴る人たち(1)】青木崇高が語る 「落語」が繋いだ国境と歴史、そしてドラマ

画・青木崇高
画・青木崇高

 私、青木崇高はこれまで、伝統芸能を基にしたドラマに出演させていただいている。

 上方落語の世界を舞台にしたNHK連続テレビ小説「ちりとてちん」(平成19~20年)、近松門左衛門をめぐる痛快娯楽時代劇「ちかえもん」(NHK 同28年)。そのほかNHK大河ドラマ「龍馬伝」「平清盛」「西郷どん」(同22年、24年、30年)など伝統芸能の指導の先生方が撮影現場に来られる時代劇への出演も多い。

 現場では歌舞伎俳優や落語家、狂言師の方との共演もある。談笑をしたり一緒にご飯を食べたりするのだが、後日彼らの本職である伝統芸能を生で観ると「あぁ、なんてことだ…。人を魅了する“化け物”じゃないか…」と、気軽に話しかけていた自分を思い出し顔を赤らめるのである。

 私は伝統芸能一家の生まれでもないし、伝統芸能に長く深く触れてきたわけでもない。不勉強であることはご容赦願いたい。ごく普通な私の視点で伝統芸能に関したことを綴(つづ)ろうと思う。

 「ちりとてちん」での役は、上方の落語家でヒロインの兄弟子、性格は直情的で落語バカの徒然亭草々(そうそう)という男だった。一方で、演じる私は、落語には触れたことがない、着物もひとりで着られなければ、お辞儀もきれいにできない。直情的な性格だけが一致していた。

 撮影前の稽古場の初日。所作をひと通り習い、いよいよ林家染丸師匠の落語の稽古が始まったのだが、あれ、話すと動けない、動くと話せない。頭と体が噛(か)み合わない。まったく思うようにできない。当たり前である。そう易々(やすやす)と習得されては師匠とてたまったものではない。

 上方落語400年の歴史が目の前に立ちはだかる。ダラダラと流れる汗が稽古着を濡らす。いやぁ難しいですね、などと少し余裕のあるふりをしていたが、稽古場を出た瞬間から顔は青ざめ、これはマズイぞ、と急いで帰宅し、録音した師匠の落語を何度も何度も聴き、ノートに書き写し、一日中ひたすらブツブツ、ネタを繰り返した。そこから9カ月間、撮影と並行してその作業を続けた。

 それがどれほど役に説得力を与えたかどうかは分からないが、「ちりとてちん」は素晴らしい脚本、演出、音楽、スタッフ、キャストの力によって生み出され、のちに「朝ドラ思い出の名シーンランキング」で視聴者が選ぶ第1位を獲得するほどの好評を得たのであった。パチパチパチ。

 放送中にこんな話を聞いた。「南米でも、“毎晩”、『ちりとてちん』が放送され、楽しく観てくれている日系移民の方が大勢いるらしい」。その年がブラジル移民百周年であることにも縁を感じた直情的な私は放送後、古着屋で買った着物、扇子をバックパックに詰め込み、南米にひとり飛び立った。

 周りの協力も得てブラジル、ペルー、パラグアイの日本人移住区を1カ月かけて回り、訪れた各地で大歓迎を受ける中、必死に覚えた落語「道具屋」を一席披露した。

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