続々参入の飲食テイクアウト 市場拡大も夏場は食中毒警戒

新型コロナウイルスの感染拡大で客足の遠のいた飲食店が、テイクアウト(持ち帰り)市場に続々参入している。消費者向けのアプリや、タクシーが配送に参入できるようになったなど関連サービスも充実してきた。ただ、立地条件などの問題もあり、軌道に乗せるのは簡単ではない。さらに、これからは夏場を迎えて食中毒の発生が懸念され、保健所は早めの消費や店舗側の適正な表示を呼び掛けている。(織田淳嗣)
「人が歩いていない」
「呼び込みもしたいんですが、そんなに人も歩いていないし…」。4月下旬、岡山市最大の商店街「表町商店街」の一角。ビルの2階にある「もなど喫茶店」の経営者、真鍋絋美さん(30)は苦笑いした。
同店は「大人がゆっくりできる場所を」と、学生時代の友人の石井寛子さん(30)と共同で平成29年7月にオープン。25席に対して面積は85平方メートルと広めで、3月はまだ、休日に満席も出る盛況だった。しかし、新型コロナの感染拡大に伴って客足が減少し、いまでは1日に多くても20人程度。アルバイトも休んでもらっている。
このため同店では4月4日から、カレー2種類とコーヒーなどの飲み物のテイクアウトを始めた。だが、ビル2階にあるため、通りすがりの一見客が客にはなりにくく、2人で営業しているため呼び込みも難しい。取材時点では「1日1食出るかどうか」という状況。チラシを立て看板につけたり、近隣に配ったりして周知を急いでいる。
店のカレーの味を求めてやってくる常連客もいる。石井さんは「常連が来てくれる場所をなくしたくない。ただお金の面では不安。違う事業をやらなくてはいけないかなとも考えている」と話した。
市場は拡大傾向
飲食店業界で試行錯誤が続いているなか、配送市場は膨らんでいる。
調査会社の富士経済の調べでは、「ウーバーイーツ」などの仲介サービスの充実や軽減税率の適用に伴い、市場は新型コロナ禍以前から増加傾向にあった。昨年の国内市場は、外食の配送が2936億円(前年比4・9%増)、持ち帰りが6014億円(3・6%増)。今後、新型コロナの感染拡大の影響でより大幅に拡大する見込みだ。