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【一聞百見】猫も人も幸せな社会をめざして 獣医師・一般社団法人Happy Tabby代表理事 橋本恵莉子さん

 「愛護センターを見に行ったり、保護シェルターを見学したり。現実を学ぶほどに、保護動物にかかわる仕事をしようと思うようになったんです」。大学を卒業後、一般の動物病院で勤務。出産で少し現場から離れたが、実は橋本さんの夫も義兄も獣医という獣医一家なのである。ほどなく義兄の動物病院を手伝い始め、そこで熱心な保護活動のボランティアに出会う。ニーズが高かったのが低価格の手術だった。

 「頼まれて始めたのですが、あるとき『1日何匹できますか?』と聞かれたんです。1件、2件が普通でしたからびっくりして。そうしたら次に一度に6匹連れてこられた。当時は今ほど技術も知識もなかったので夜中までかかりました」と苦笑する。通常、一般の動物病院では麻酔や点滴のための血管を確保したり心電図やモニターを付けたりと手順を踏む。一方、専門クリニックでは、機材もできるだけシンプルにして機能的・合理的に手術を行う。開腹する場合もごく小さな傷にとどめ、手術時間も短い。

猫の避妊去勢手術を行う橋本さん。「ニーズは高くやりがいがある」と話す=大阪府八尾市(薩摩嘉克撮影)
猫の避妊去勢手術を行う橋本さん。「ニーズは高くやりがいがある」と話す=大阪府八尾市(薩摩嘉克撮影)
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 「こんな世界があったのか、と。それからは皆さんの役に立ちたくて手術の腕を磨き、地域猫活動の勉強もして。あるとき、ボランティアさんが普及活動をしてもなかなか話を聞いてもらえないと嘆いていたんです。じゃあ獣医が話をしたらどうかと思って始めたら反応が違った。獣医が言葉を発することに意味があるのかなと思い始めました」。

 もう一つ、自身の仕事と活動に意義を見いだす理由があった。女性のキャリア形成という視点だ。橋本さんは現在、3歳と6歳の子供の子育て中である。「臨床の現場にいると入院や急な手術などもあって家庭との両立は簡単ではありません。結婚を機に辞めたり、獣医師免許を眠らせたままの人も結構、多いんです。そんな女性たちにこういう働き方もあるということを知ってもらいたい」。完全予約制のクリニックなら時間調整がしやすく、手術件数をこなすことで技術を磨くこともできる。

 「ケガを治したり病気を治療したりという仕事は華やかですし、やりがいもある。でも、避妊手術がどれほど社会への貢献度が高いかということに、獣医師自身が気づいていないと思います。不幸な動物を減らし、人間のため社会のためになる。誇れる仕事です」。社会のため人のため、そして動物のため。橋本さんのゆるぎない信念はそこにあった。

■命を慈しむ気持ちで社会は変わる

 「猫は野生動物ではありません。まず、その誤った認識を正したいですね」。そう聞いて、実は意外に思う人は多いのではないか。獣医師である橋本さんが、強く訴えるメッセージの一つだ。「猫は屋外にいて当たり前だと思われていますが、野良猫も、もとは人に飼われていた猫が捨てられ、生き延びた一部が繁殖したものです。野生種のヤマネコなどとは違います」

 ところが、街なかで野良猫を見かけるため、安易に捨てる人が後を絶たない。悪循環が繰り返されているのだ。病気やケガ、事故などのリスクが高い屋外で暮らす野良猫は、平均寿命が2年程度ともいわれる。「捨て猫にとってはさらに過酷です。生きていけず、命を落とす猫がほとんどなのです」

「命の教室」で子供に話をする橋本さん。「動物にも痛みや悲しみがある」と伝える(本人提供)
「命の教室」で子供に話をする橋本さん。「動物にも痛みや悲しみがある」と伝える(本人提供)
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 昨年、橋本さんが立ち上げた「一般社団法人Happy(ハッピー)?Tabby(タビー)」では、クラウドファンディングで資金を集め、絵本「お母さんのらねこのおはなし」を作って大阪府内の公立小中学校に寄贈した。絵を描いたのは橋本さん自身で、府外からも名古屋市や兵庫県加古川市、奈良県大和高田市などが納めてくれたという。第2弾「あるすてねこさんのおはなし」も先月下旬に発表したばかり。ユーチューブにアップし、だれでもアクセスできるようにした。

(次ページは)動物虐待なき世界へ…

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