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【一聞百見】猫も人も幸せな社会をめざして 獣医師・一般社団法人Happy Tabby代表理事 橋本恵莉子さん

「マンションの部屋に置き去りにされていたんです」と保護猫を抱く橋本恵莉子さん=大阪府八尾市(薩摩嘉克撮影)
「マンションの部屋に置き去りにされていたんです」と保護猫を抱く橋本恵莉子さん=大阪府八尾市(薩摩嘉克撮影)
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 「めざすのは手術の無償化です」。仕事と子育てを両立しつつ、大きな目標を掲げ、社会を変えようと取り組む女性がいる。大阪府八尾市で猫の不妊去勢手術専門クリニックを開く橋本恵莉子さん(37)。昨年にはその目標に向けた一般社団法人を立ち上げ、啓蒙活動のためにクラウドファンディングで資金を集め絵本も出版した。背景にあるのは、動物虐待や遺棄、多頭飼育崩壊といった動物をめぐる社会問題への危機感だ。「獣医師として何をすべきか」を模索するその信念について聞いた。

(聞き手 山上直子 編集委員)

■不妊去勢手術を無料に

 「1組の猫のカップルがいたとします。6カ月もすると出産できるようになり、1年に2~3回、1回につき4~5匹を生む。子供世代も合わせると…、1年で65匹になるんですよ」。具体的な数字を聞いて、あぜんとする。多頭飼育崩壊など、社会問題化する大きな要因がその繁殖力だ。それゆえの不幸な結末も、いまだ多い。環境省によると、平成30年度の殺処分数は犬7687頭に対し、猫は3万頭を超え、その多くは捕らえられやすい子猫である。「食い止めるために獣医師にしかできないのが不妊去勢手術です。その普及こそが不幸な動物を減らし、同時に人間社会にも貢献できると思うのです」

 もちろん、社会の意識も随分変わってきた。最近は野良猫を捕まえて手術を受けさせ、同じ場所に放すボランティア「TNR活動」が広がっている。問題はその費用だ。さまざまな病気やけがに対応する普通の病院では通常、オスの去勢で1~2万円、メスの不妊で2~3万円かかる。橋本さんの専門クリニックは完全予約制で手術に特化。それぞれ5000円、7000円に抑えている。所要時間も短く、小さく開腹する技術でメスの場合でも15~20分程度。1カ月にこなす手術件数は200~250件というからすごい。

クラウドファンディングで出版された絵本「お母さんのらねこのおはなし」。野良ネコの過酷な実態を伝えるために橋本さんが描き、大阪府内の公立小中学校に寄贈した
クラウドファンディングで出版された絵本「お母さんのらねこのおはなし」。野良ネコの過酷な実態を伝えるために橋本さんが描き、大阪府内の公立小中学校に寄贈した
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 「ところが、問題は野良猫だけではないんです」という橋本さん。こうした活動が広がれば“殺処分ゼロ”実現も近いのでは、と思ったがそう甘くはないようだ。飼い猫でもいまだに不妊手術をしない飼い主がいて、放し飼いをしていれば結果は同じだからである。「費用の問題もありますが『手術はかわいそう』という人も意外と多い。ですが、それは大きな間違いです。もっと猫の生態を知ってほしい。発情期がなくなれば穏やかに過ごせるし、長生きする確率も上がるのです。手術は飼い主にも猫自身にとってもメリットが大きいことを知ってほしいのです」。苦しむ猫を減らし、人間も笑顔に。そのために必要なのが、獣医師による啓発なのである。

■「社会に貢献」手術への信念

 橋本さんが獣医師の道に進んだきっかけは-。「子供のころから動物は好きでしたが、ペットが飼えないマンションに住んでいたので。ケガをしたハトを連れて帰って世話をしたり、家ではインコを飼ったりしていました」。野生動物のテレビ番組が大好きで、野生動物を治療する獣医にあこがれた。大学の獣医学科に進んだのもそのためだったが、ある日、捨て猫を拾う。初めての経験だった。「よくある箱に入れて捨てられていた子猫。3匹でした。病院に連れていき、里親を探して。残った1匹は今も自宅にいます」。そのとき、なぜ人は飼っている猫や犬を捨てるのかと疑問に思ったことがすべてのきっかけになった。

(次ページは)命を慈しむ気持ちで社会は変わる…

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