PR

産経WEST 産経WEST

【ビブリオエッセー】こんな私をわかってほしい 「生きてるだけで、愛。」本谷有希子(新潮文庫)

 辛い心の病を抱えている人などに「メンヘラ」という言葉が平然と飛びかっている。いまや流行している。私は『生きてるだけで、愛。』を読み終え、この言葉を安易に口に出すことが怖くなった。

 私たちの間でのメンヘラは可愛さやあざとさを感じる言葉であり、かまってほしい人がSNSでアピールしていたり、ファッション的なものが多いと思っていた。しかし、この小説は本物のメンヘラが存在していることを教えてくれる。主人公の「あたし」、寧子(やすこ)は本物だ。

 突拍子もない言動、過眠症、引きこもり…、自分なりに必死で生きているのに駄目の烙印を押されて鬱になる日々。バイトは辞めるために始めるんじゃない、寝てたくて寝てるんじゃない、怒りたくて怒ってるんじゃない。

 いまは合コンで知り合った彼氏、津奈木のマンションに転がり込み、そのまま同棲しているが、そこへ元カノが戻ってきて、話はややこしくなる。寧子がもし身近にいたらメンヘラだとか社会不適合者といわれるのかもしれないが、そんな言葉で片づけるべきではないと思う。

 ただ人より少し変わってはいるが、一人の悩める女性なのだから。少し感情移入してしまったかもしれないが、激情というありのままの感情や病と戦う彼女を美しいと感じた。見た目などでは計り知れない美しさなのだ。

 繰り返し、思う。メンヘラという言葉でくくってしまっていいのだろうか。映画化もされたこの小説。寧子の物語をぜひ読んでみてほしい。

 東大阪市 中野日奈乃 20

 【ビブリオ・エッセー募集要項】本に関するエッセーを募集しています。応募作品のなかから、産経新聞スタッフが選定し、月~土曜日の夕刊1面に掲載しています。どうか「あなたの一冊」を教えてください。

 投稿はペンネーム可。600字程度で住所、氏名、年齢と電話番号を明記し、〒556-8661産経新聞「ビブリオエッセー」事務局まで。メールはbiblio@sankei.co.jp。題材となる本は流通している書籍に限り、絵本、漫画も含みます。採用の方のみ連絡、原稿は返却しません。二重投稿はお断りします。

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ