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【阪神大震災25年】生き残った だから詠む 89歳の被災歌人、最後の個展

 《余震に怯(おび)え配られたおにぎり握りつぶして食べられもせず

 《住拠を失った者はどこへ往(い)く…宙ぶらりんの夜の天秤(てんびん)》

 「歌と対峙(たいじ)していると、つかの間の心の平安が保たれました」。被災から約2カ月たった3月からは、仮設住宅で歌誌「創芸」の活動を再開させ、6月からはテープレコーダーを手に炎天下、各地の仮設住宅を訪ね歩き体験談を聞いた。言葉を持たない犠牲者のため、震災を語り継がねばと思ったからだ。

 最初は「なぜ被災者がこんなことをするのか」とけげんな顔をされたが、「生き残ったからです」と思いを伝えると、話をしてくれた。「同じ痛みを経験した者同士、気持ちが通じ合うんですね」。テープを再生すると何度も心が「あの日」に引き戻されたが、やめなかった。

 産経新聞などで活動が取り上げられ、短歌を寄せてくれた被災者もいた。自身も揺れる心境や、風化への警鐘の気持ちなどをつづった。

 《往こか戻ろうかここより先は南花屋敷二丁目のぼり坂

 《耳目を塞いではならぬ忘れてはならぬと瓦礫(がれき)のなかの虫が哭(な)

 集めた体験談や短歌は百人分。震災から1年後に証言集として自費出版し、大きな反響を呼んだ。本を贈ると「一生の宝物にします」と喜んでくれた被災者もいた。「疲れもすべて吹き飛びました」

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