PR

産経WEST 産経WEST

【ビブリオエッセー】素顔の作家、最後の3年半 「五衰の人 三島由紀夫私記」徳岡孝夫(文春学藝ライブラリー)

 「今こそわれわれは生命尊重以上の価値の所在を諸君の目に見せてやる。それは自由でも民主々義でもない。日本だ。われわれの愛する歴史と伝統の国、日本だ」

 49年前の11月25日、三島由紀夫氏は自衛隊市ヶ谷駐屯地で、憲法改正のため自衛隊員に決起を呼びかけた後、自らの命を絶ちました。その日、事件の直前、三島氏から手紙とこの「檄文」を託されたのが著者、徳岡氏です。

 三島氏に関する研究や評伝を読み漁っていた私が行き着いたのがこの一冊でした。ああ、こういう本が読みたかったのだと。

 雑誌や新聞の記者だった著者はインタビュー取材で三島氏と知り合います。特派員だったバンコクや三島氏の自宅などで親しく話をする機会は何度かあって、でも「わずか三年半」のつきあい、あの檄文を「なぜ私に?」と思ったようです。しかし読み進めるほどに三島氏が託した理由もわかる気がしました。作家の死から25年後に書かれた本書には、出会いから自決の日、その後が綴られています。

 三島氏と言えば実にたくさんの顔を持った人だったようですが、センセーショナルな部分だけを強調した人物像とは違い、まっすぐで気さく、茶目っ気のある生身の三島氏がここにはあります。それに触れることで、三島氏の言葉を素直に感じることができるのではないでしょうか。

 過去のインタビュー記事を読み返す著者に三島氏はこう語りかけてきました。

 「ぼくの死から一滴の水がしたたったら、その水を心に受けて考えてごらんということです」

 兵庫県川西市 ヤマネコ48

【ビブリオ・エッセー募集要項】

 本に関するエッセーを募集しています。応募作品のなかから、産経新聞スタッフが選定し、月~土曜日の夕刊1面に掲載しています。どうか「あなたの一冊」を教えてください。

 投稿はペンネーム可。600字程度で住所、氏名、年齢と電話番号を明記し、〒556-8661産経新聞「ビブリオエッセー」事務局まで。メールはbiblio@sankei.co.jp。題材となる本は流通している書籍に限り、絵本、漫画も含みます。採用の方のみ連絡、原稿は返却しません。二重投稿はお断りします。

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ