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【ビブリオエッセー】昭和最後の夏、平成、そして令和 「夏の騎士」百田尚樹(新潮社)

 冒頭部に「あれから三十一年の歳月が流れた。平成は過ぎ去り令和となり、十二歳の少年は四十三歳の中年男になった」とある。令和という新元号をいち早く使うことで、本当にピッカピカの新作であることを作者はまずアピールしたかったのだろう。僕は、まんまと引っかかった。

 この冒頭を信じて、もし令和になって書き始めたものなら三カ月ほどで二百五十ページを書き上げたことになる。発行日は今年の七月二十日となっているからだ。僕はその方に興味がわいた。

 でも、したたかな作者のことだ。大半を改元前に書き上げて、改元後に令和の部分を書き加えたのだろう。

 物語は三十一年前、昭和の「最後の夏」にさかのぼる。主人公の「ぼく」は小学校六年生だった。クラスの落ちこぼれ三人で「騎士団」を結成、名誉と勇気を重んじ、仲間を裏切らないことを誓い合った。学校一の美少女を「レディ」に見立て、愛と忠誠を捧げることも決めた。

 三人は近くの雑木林の中に「秘密基地」を持っていた。ここでの謀議を中心に落ちこぼれ三人組の奮闘が始まる。このシチュエーションだけでも、読む方はワクワクだ。友情、淡い恋心、受験、殺人事件に加え、「妖怪ババア」まで登場。物語は複雑にからみ合いながら、エンディングへ向かう。

 読み始めたら途中ではやめられない。一気に読まされる。例の「ヨイショ」感想文キャンペーンではない。七十二歳のオジンが言うのだから間違いない。

 大阪府箕面市 竹中正72

【ビブリオ・エッセー募集要項】本に関するエッセーを募集しています。応募作品のなかから、産経新聞スタッフが選定し、月~土曜日の夕刊1面に掲載しています。どうか「あなたの一冊」を教えてください。

 投稿はペンネーム可。600字程度で住所、氏名、年齢と電話番号を明記し、〒556-8661産経新聞「ビブリオエッセー」事務局まで。メールはbiblio@sankei.co.jp。題材となる本は流通している書籍に限り、絵本、漫画も含みます。採用の方のみ連絡、原稿は返却しません。二重投稿はお断りします。

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