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【探偵記者】ウケ狙いだけじゃない 熱い思いの「ご当地サイダー」

主なご当地サイダーと製造元
主なご当地サイダーと製造元
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 ラーメンや餃子、ハンバーガー、ビール…。世間には数多くの「ご当地グルメ」があるが、最近存在感を増しているのが「ご当地サイダー」と聞いた。全国で700を超える種類が確認されているという。リンゴやナシなどフルーツの風味を生かしたものからネギやイカスミ、辛子明太子といった変わり種まで。おいしいのか? そもそもなぜサイダー? これは飲んで確かめるしかない。(藤崎真生)

 瓶のラベルに大きく記されたのは「葱(ねぎ)」の文字。蓋を開けたとたん、青臭いといえばいいのか、ネギの強い香りがただよう。においに刺激されてか、それとも鬼軍曹(デスク)の突然の離任が決まったからか、視界がかすんだ。

 大阪府松原市が地元食材を紹介するイベントで販売するために新開発した「なんばネギサイダー」(200ミリリットル、税込み250円)。大阪府が認証する「なにわの伝統野菜」のひとつで濃厚な甘みと香り、強いぬめりを持った「難(なん)波(ば)葱」のエキスが配合されているという。一大産地である松原市で、意外な掛け合わせのご当地グルメが完成した。

 いざ、口にしてみた。広がるのはまさに難波葱の香り。鍋や炒め物にして食べたことがあるが、鼻に残るパンチの効いた香りが再現されている。

 「『ネギ感』を前面に押し出しています」と市産業振興課長の中尾憲次さん(44)は話す。実はご当地サイダー作りに挑戦したのは今回が2回目。昨年、市花のバラにちなんで「まつバラサイダー」を作り、優しい甘さで飲みやすいサイダーが完成したものの、残念ながら話題にはならなかった。今回はネギサイダーでインパクトを狙う。

 確かに鼻にからみつくようなにおいは強烈だ。中尾さんの話が耳に入ってこない。味付けにどんな工夫が?

 「葱の風味を最大限に引き出しながら、サイダーの味わいを消さない。絶妙の配合割合があります」

 松原市から依頼を受けてネギサイダーを製造した佐賀県唐津市の老舗飲料メーカー、小松飲料(佐賀県唐津市)の常務、小松三郎さん(42)が答えてくれた。数年前から全国の地方自治体などに依頼を受けてご当地サイダーを作り続けていて、野菜ベースのサイダーもお手の物だ。

 聞けばこれまで手がけたのは数百種以上というから驚いた。まさにブームの仕掛け人ではないか。

 「サイダーはエキスを加えるだけで味が大きく変化することから、比較的簡単に特色が出しやすい」と小松さん。だから個性を競うご当地グルメに適しているのか。「なにより日本人の故郷を思う『郷土愛』がご当地サイダー作りを後押ししています」と語る。

 それにしても、サイダーを飲んだのは数日前だというのに、小松さんの話を聞いているとネギの香りがよみがえってくる。

 各地には「イカスミサイダー」(青森県八戸市)や「辛子めんたいコーラ」(静岡県島田市)といった面白風味まである。全国清涼飲料連合会(東京都)の山田浩さん(53)によると、販売終了分も含めるとこれまで760種類以上のご当地サイダーが世に出ているという。

 日本にサイダーの元祖である炭酸水がもたらされたのは明治維新のころ。100年以上かけてサイダーは未成年からお年寄りまで幅広い世代で楽しめる国民的飲料として根付いた。山田さんは「日本人が子供のころから親しんでいる味というのもご当地グルメとしてヒットする理由では」と指摘する。

 あぁ、「なんばネギサイダー」は一度飲んだら決して忘れられない風味だった。鬼軍曹との別れに手渡せば、私も記憶にとどめてもらえるだろうか。

 ■秀吉も愛した味をサイダーで

 大阪にはなんばネギサイダーのほかに、甘酒とサイダーの味を一度に楽しめる「天野酒奥河内あま酒サイダー」(寿屋清涼食品)もある。平成26年3月の発売以来、人気の有名ご当地サイダーだ。

 同府河内長野市の名産で、豊臣秀吉も愛飲したと伝わる天野酒をイメージした。発案者の一人、同市の老舗酒蔵「西條合資会社」の蔵主・西條陽三さん(55)から「瓶の底に『甘酒のうまみ分』が沈殿するので、ゆっくり混ぜるのがポイント」と飲み方のアドバイスをもらって、さわやかな甘みを楽しんだ。

■郷土愛を飲み干して

 「ご当地サイダー」が全国で広まった理由を追う中で印象に残ったのは、小松三郎さんの「郷土愛」という言葉だった。

 小松さんがご当地サイダー作りを本格的に始めるきっかけになったのは、地元産のナシをめぐる問題にあった。数年前、地域の農家が豊作の影響でナシの出荷を止めなければならない事態に直面。「このナシを無駄にしたくない。何とかならないか」という相談を持ちかけられ、ナシの果汁を加えたサイダーを完成させた。小松さんは「特産品があっても、世の中に出ないと意味がない」とも話し、サイダーを介して各地の応援をしている。

 イカスミや難波葱(ねぎ)といった変わり種までサイダーになるのも、郷土の名産を生かそうと思う人々の強い思いがあってこそだ。旅先や出張先でご当地サイダーに出合ったら、ぜひ、作り手の熱意を感じながら飲んでほしい。

 ■探偵記者

 趣味…テコンドー。10月に出場した試合で、相手からみぞおち付近に蹴りを食らうも意地でダウンは回避。45歳でも「自分はまだやれる」と思っている。

 特技…カメラだが「日々修行」の思い。「なんばネギサイダー」の現物撮影で、担当カメラマンの魅せる撮り方を見て「勉強になった」と痛感している。

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