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日本の「はんこ文化」が逆風 デジタル化の対応苦慮

 一方、昨年6月に閣議決定された「未来投資戦略」には、来年度中に法人設立時の印鑑義務の任意化を実現すると記載。法務省は来年の通常国会で商業登記法を改正し、オンライン申請だけで起業できるよう取り組む方針だ。

●決済電子化

 自治体や企業で必要とされてきたはんこだが、「もらうまでに時間を取られて生産性が落ちる」「押印のための押印は意味がない」などの不満も少なくない。

 行政でいち早く脱はんこに動いたのが千葉市。約3千種類の手続きで必要だった押印の必要性を平成26年に見直し。約2千種類を署名か記名押印の選択制に改めることを決めた。茨城県も昨年4月に決裁電子化を始め、13・3%だった電子決裁率が同年7月にほぼ100%を達成。銀行や不動産業界でも印鑑を廃止する動きがみられる。

 武蔵大の庄司昌彦教授(情報社会学)は「日本企業は三文判のようなセキュリティーの甘いはんこを使い、何重もの決裁のため余計な時間や紙が発生するケースが多い」とデジタル化による効率化の意義を説く。その上で、「この議論は、不要な手続きの見直しという観点からスタートすべきだ。結果として生き残る貴重な印鑑もあるはずだ」と主張している。

●はんこ店、減少の一途

 はんこ文化は台湾や韓国などアジアの一部にも存在するが、日常利用するのは世界でも日本だけ。ただ、日本のはんこ店も、近年は減少の一途をたどる。

 はんこの歴史に詳しい大阪芸大客員教授の久米雅雄氏によると、日本最古のはんこは1784年に福岡市の志賀島で見つかった「漢委奴(かんのわのなの)国王印」(漢伊都国王説も)。「奈良時代、隋や唐の印を模した官印が使われ、江戸以降に庶民の間で流行した」と説明。1873(明治6)年には印鑑登録制度が始まり、今に続く署名捺印(なついん)が制度化された。

 日本特有のはんこだが、需要減や後継者不足で、廃業する専門店が後を絶たない。全日本印章業協会によると、平成元年に4370人だった会員数は、今年6月末には941人と初めて千人を切った。久米氏は「はんこは日本固有の伝統文化。安易に壊されるべきではない」と訴える。

 同協会の徳井孝生会長は「印影をスキャンしてデータ化するなど、はんこもデジタル化に対応する必要がある」と強調。ただ、社会に根付く印章制度を急変させることは、「ITに弱い人の情報格差問題もあり、混乱を招きかねない」と指摘した上で、「なくす議論ではなく、国民の多くが持つはんこをどう活用するかが重要。国とともに方策を考えたい」と話した。

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