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【ビブリオエッセー】20年を経て知る気持ち 「精霊の守り人」上橋菜穂子(偕成社)

 もう20年も前だが、この本に出会った時のことは、はっきり覚えている。子供たちの誕生日プレゼントを探しに本屋さんに行った時だった。本好きの方ならきっとおわかり頂けると思うのだが、まるで孫悟空が魔法の瓢箪(ひょうたん)にヒューッと吸い込まれたかのように、本の世界に入ってしまう時がある。この本はまさにそういう本だった。

 短槍使いのバルサはタフな凄腕の女用心棒である。バルサは新ヨゴ皇国の幼い皇子チャグムの用心棒となり、チャグムを助け、守り、しばらくの間、育てることになる。その中でバルサに温かな気持ちが芽生え、チャグムと心を通わせていく。

 一方、バルサ自身は幼い頃に故郷カンバルの王家の内紛に巻き込まれ、親を失い、父の親友である短槍の名手ジグロに育てられた。バルサを助けるために故郷を捨て、親友たちを倒すことになったジグロに、バルサはずっと負い目を感じていた…。

 この本を買ってから20年、子供たちは仕事に就き、家を出た。子供たちが家を出た時、本当に寂しくてたまらないと思った。今まで手をかけて大切に育て、守ってきたつもりであったが、実は子供を育てている間、こちらが心から満たされ、癒され、育てられてきたのだと気づいた。

 バルサもチャグムとともにいる間、そうであっただろうし、ジグロも、たとえ悲しい目に遭ったとしても、バルサを育てることで与えられる幸せを感じていたのではないかと思う。

 出会いから20年を経て、初めて登場人物の気持ちがわかることもあるのだと思った。

 京都市北区 ドクターA59     

【ビブリオ・エッセー募集要項】本に関するエッセーを募集しています。応募作品のなかから、産経新聞スタッフが選定し、月~土曜日の夕刊1面に掲載しています。どうか「あなたの一冊」を教えてください。

 投稿はペンネーム可。600字程度で住所、氏名、年齢と電話番号を明記し、〒556-8661産経新聞「ビブリオエッセー」事務局まで。メールはbiblio@sankei.co.jp。題材となる本は流通している書籍に限り、絵本、漫画も含みます。採用の方のみ連絡、原稿は返却しません。二重投稿はお断りします。

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