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人間関係重視の介護現場、被害女性断り切れず

 介護のために男の自宅を訪れた被害女性は、勧められた飲料をいったん拒否したが、強く勧められて断り切れずに口にしてしまったという。介護事業者側には安全面から、提供された飲食物は断るべきだとの認識があるが、専門家は「人間関係が重要視される介護の現場では断りづらいのが現実」と指摘。「危害を加えられることもあると想定し、対策を取ることが必要だ」としている。

 被害女性を派遣していた事業者などによると、男は訪問日の前日、午前6時に自宅に来るよう依頼。だが、普段は午前7時からのため、女性は当日少し遅れて到着した。

 「健康にいいから」。介護が始まると、男は睡眠導入剤入りの飲料を勧めてきた。女性は拒否していたが、「遅刻したんやから」などといわれ、断り切れずに飲んだという。意識がもうろうとした女性は軽乗用車で帰る途中、民家の外壁に衝突した。

 介護業界に詳しい淑徳大学の結城康博教授(社会福祉学)は「訪問介護などで、利用者から提供された飲み物は飲まない方がいいという『暗黙の了解』が業界内にはある」と話す。今回の事業者も、研修や会議でスタッフに、利用者から提供された飲食物は拒否するよう注意を促していた。

 また事業者は、密室で2人きりになることも考慮し、比較的障害の程度が軽い訪問介護の男性利用者らには基本的に男性スタッフを派遣していた。しかし、男は障害が重く「何もできないだろう」(担当者)と、女性も派遣していたという。

 事業者側は事件後、「提供された飲み物は一切飲まない」とほかの利用者に改めて説明。スタッフには現場に水筒を持参させ、飲食物を勧められたときは「会社のルールで決まっている」と断るように指示した。ただ、「うちだけこのような措置をとれば愛想が悪いと受け取られかねない」(同)と困惑気味だ。

 厚生労働省によると、今年2月に実施した介護現場への調査で、訪問介護職員の半数が利用者からセクハラや身体・精神的暴力のハラスメント被害を受けたことがあると回答。昨年1年間にハラスメント被害に遭ったと回答した職員のうち精神的暴力が81%で最も多く、身体的暴力は42%、セクハラが37%だった。

 結城教授は「『介護を受ける人は社会的弱者』という意識から、介護職員らが被害を受けても声を上げにくいという状況があったが、表面化するようになった」と指摘。その上で「介護現場でも危害を与えられることがある。提供物を受け取らないなどの対策を自治体がルール化するなどし、社会としてコンセンサスを得ていく必要がある」と話している。

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