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【オーケストラ 神話のゆくえ】第一楽章・葛藤 「解散」の足音に揺れて 夢は生活あってこそ

精緻で透明感のある音色が聴衆を魅了する日本センチュリー交響楽団 =大阪市北区のザ・シンフォニーホール(安元雄太撮影)
精緻で透明感のある音色が聴衆を魅了する日本センチュリー交響楽団 =大阪市北区のザ・シンフォニーホール(安元雄太撮影)
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 いくつもの楽器の音色が重なり、あらゆる表現を可能にするオーケストラ。明治時代に西洋音楽が輸入されて以降、日本でも長年親しまれてきた。ところが今、娯楽の多様化などで多くの楽団が集客や運営の厳しさに直面する。すぐれた芸術活動を続けてさえいれば、その価値は評価され、オーケストラはつぶれない-。音楽界で長年信じられてきた、そんな神話が大きく揺らぎ始めている。(安田奈緒美)

     ◇

 9月下旬、音響設備の整ったホールに、モーツァルトの豊穣(ほうじょう)な世界を点描するような、透明な響きが満ちた。互いの音に耳をすませ、寄り添う奏者たちが生み出す、緻密でありながらやさしさのあふれる音。これが「日本センチュリー交響楽団」(大阪府豊中市)の魅力であり、多くのファンを虜(とりこ)にしてきた。

 しかし、現在のセンチュリーは、かつてない経営危機に瀕(ひん)している。

 「オーケストラで弾くのはあこがれでした。まさかオケに入って、ビラ配りをするなんて思いもしませんでした」

 創立当初からのメンバーで、バイオリニストの小川和代さんは話す。平成元(1989)年に大阪府営として発足した当時から楽団員の平均年収は大阪にある4つのプロオーケストラの中で最も高く、運営費も潤沢。海外公演も行うなど、「音楽に集中できる恵まれた環境」(小川さん)だった。

 しかし、大阪府知事に就任した橋下徹氏が府営を疑問視し、平成23(2011)年に民営化されると、センチュリーを取り巻く状況は一変した。現在は財産を取り崩してしのいでおり、このままでは2年後に資金が底をつく。神話崩壊を意味する解散が現実味を帯びている。

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◆オケの誇り

 数年前からセンチュリーは楽団員のボーナスや給与のカットを重ね、予算を切り詰めてきた。

 「オーケストラが解散したら、どうすればいいのか。この年齢で他の楽団に移籍するのも難しいでしょうね」

 トランペット首席奏者の小曲俊之さん(42)は悩ましげな表情で話す。センチュリーと同様に民営化された大阪市音楽団から移籍してきた。給与が右肩下がりでも、プロのオーケストラの一員として吹き続けたいと願う。楽団員の間からは「固定給でなくなってもいい」「歩合給を導入してでも、プロオーケストラとして残してほしい」との声も上がる。

(次ページ)たとえばトランペット…プロ奏者のポスト、わずか100未満

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