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【ビブリオエッセー】清らかさと折れない強さ 「心の王冠」菊池寛(真珠書院・パール文庫) 

 数十年前、初めてその本を読んだ。子供ながら、主人公の町子が不憫(ふびん)で涙したのを覚えている。

 確かその内容は、主人公の町子が同級生の金持ちの娘、典子にことごとくいじめられるが後に立場が逆転し、町子は成功を手に入れ、典子とも和解するという話だった…。はずだが詳しい中身はさすがに記憶の霧の中、もう一度読み返したくなった。娘に頼んでやっとネットで買うことができたのが、新たに編集されたこの一冊だ。

 町子は美貌と才能、そして優しさを兼ね備えた女学生だったが家は貧しく、病に倒れた父や母とともに、典子の父の世話になっていた。父の死後、ある事件がきっかけで家を追い出される。恩師の女性教師、村田先生の尽力で東京に出て、また好意を寄せてくれていた同級生の侯爵令嬢、美年子(みねこ)の協力により好きな声楽の道に進み、やがて名声を得る。同じ音楽の道に進んでいたのが典子だった。こちらはピアニストとしてなかなか芽が出なかったが…。

 あの菊池寛による戦前の少年少女向け小説だ。逆境にめげない町子の清らかな心は本当にすばらしいと思うが、これも町子に才能と努力があったからこその話で、もし才能がなければ村田先生や美年子の協力は得られただろうか。

 昨今のいじめ問題が頭をよぎった。町子のような一発逆転はなかなか難しいと思うが、何か一つでも自分に自信を持てるものがあれば、それに向かって努力することを忘れないでほしい。自分に自信を持てば周囲の目も少しずつ変わっていくのでは。強い心で乗り切ってほしい。

 大阪市鶴見区 板井弘美67     

【ビブリオ・エッセー募集要項】本に関するエッセーを募集しています。応募作品のなかから、産経新聞スタッフが選定し、月~土曜日の夕刊1面に掲載しています。どうか「あなたの一冊」を教えてください。

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